第19話
「仙台に来たのは…何となく気に入ったから。
理由は上手く言えないんだけどね。
そう、何となくなの。
今日森本さんに逢えなかったら、どうしようとも考えてなかった。
逢える気がしてた」
悲しそう表情だった彼女は、少し顔を明るくした。
「あたし、こっちに住みたい。
けど、何も解らない。
家を出たのも、他の場所に住むのも、全部解らない事ばかり。
住むならいくらくらいかかる?
仕事はすぐに見つかるかな」
「普通は仕事が決まってから、引っ越して来るもんだと思うぞ。
家を出るにしても、無謀すぎるんじゃないか?
いくら何でも、色々浅はかすぎる。
こっちは賃金なんて、東京とかに比べたら安いぞ。
治安の良し悪しも極端だし、最近は外人の移住者も多くなってきたし」
「森本さんは、この辺で仕事してんじゃないの?」
「私はリモートだし、家に籠ってやる仕事がメインだよ。
仕事はいろんなところからくる。
委託もあるし」
委託…と言っても解らんだろうな。
まあ、いっか。
「仕事が見つかってない状態で、アパートとか貸してくれるとは思えんがな。
仮に貸してくれたとしても、駅からすんげ~遠いとか、治安がすんげ~悪いとか、そんな感じだと思う。
あとは管理会社がちゃんとしてなかったりとか。
とにかく、リスクは高いからおすすめはしない」
「まじかあ…どうしたらいいかな…」
再び暗い顔になる彼女。
表情がころころ変わって忙しい。
「住み込みで働けるところとか、社宅があるところとかで、働くってのも手段だよ」
「う~ん…」
彼女は腕を組んで考え出す。
…本当に何も考えずに、家を飛び出して来たんだなあ。
無謀と言うか、大胆というか。
案外肝は据わっているようだ。
と、急に閃いた顔になった彼女は。
「ねえ、あたしの家と仕事が見つかるまで、ここに置いてよ。
仕事が見つかるまで、バイトとか単発の派遣の仕事とかして、お金はちゃんと入れるからさ」
彼女の発言は、時に大胆不敵で。
そして、呆気に取らせるのも多くて。
「んなもん、無理に決まってんだろ」
「この前、人には優しくするって言ってたじゃん」
「限度ってもんがあんだろうが。
それに、お嬢ちゃんを面倒みなきゃいけない理由もない。
確かに色々大変だったみたいだけど、申し訳ないが、私には無関係だ」
間違った事は言ってないと思う。
冷たいと言われてしまうだろうが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます