第18話

「彼氏は大学に行ったんだけど、あたしと時間が合わなくなって。

 逢いたい時に逢えないし、休みの日もあたしが疲れちゃって動けなくて。

 まあ、結果的に彼氏は他の子と遊ぶようになって、合コンもガンガン行って。

 共通の友達から浮気してるの聞いて、問いただしたらびっくり。


 『お前が俺を放っておくのが悪いんじゃない?

  仕事ばっかだし、逢えないし、付き合い悪いし。

  俺が浮気したって、文句言えなくね?』だって。


 呆れちゃって、殴る気も失せた。

 あの時は本当に孤独だった…。


 相談出来る人もいない。

 友達は楽しそう。

 家族は新しい子供に夢中。

 彼氏には捨てられて、もうどうしていいのか解らなくなっちゃってさ。


 会社辞めて、貯金全部下ろして、適当なバッグに適当に荷物を詰めて、家を飛び出したの。

 行けるなら、何処でも良かった。

 自分を知ってる人がいない場所に、逃げたかった。

 で、気付いたら新幹線に乗って、仙台に辿り着いたの。

 意識は結構いっぱいいっぱいで、朦朧としてたんだよね。

 我ながら、危ない事しちゃった」


弱々しい言葉で、彼女は言葉を発していく。


「最初はホテルに泊まれた。

 素泊まりなら安いし。

 でも、お金はどんどん無くなっていくから、途中からネカフェにいた。

 けど、変な男に目を付けられたから、長くはいれなかった。

 お金もないし、行くところもない。

 どうしていいか解らなくて、たまたま行き着いたあの公園で、ぼ~っとしてた。

 今の事も、先の事も考えられなかった…。

 そんな時、森本さんが声を掛けてくれた」


深く重い話。

ドラマとか、小説とかの中だけと思っていたが、実際の世界であるなんて。

声を出さず、頷く事しか出来なかった。


「怖かったけど、他に行くところもなくて。

 暖かい部屋、コーヒー、ソファに布団。

 お風呂も食べ物も、全部嬉しかった。

 久々に誰かに、優しくしてもらえたのが、凄く嬉しかったんだ…。


 森本さんと別れた後、ちゃんと家に戻った。

 短期の仕事とか、単発の派遣とかやりまくってお金を貯めた。

 そのお金を持って、こっちに来た」


「そんなに頑張って働いてたなら、そのまま何とでもなっただろうに」


「がむしゃらだったから、出来たんだと思う。

 家を出る話をパパ達にしたけど、何も言われなかった。

 ママにも相談したけど、貴女がしたいようにしなさいって。


 そんで荷物も整理して、家を出た」


こっちじゃなくても、他にもいろんな場所があるのに、どうしてこっちに来たのかが不思議だった。

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