第12話

コンビニで買い物を済ませ、帰宅した。

彼女はまだ風呂に入っていた。


買い物袋から女性物の下着を取り出し、洗面台のところに置いておいた。

また1つ、いらん事をしてしまったかな。

…まあ、いっか。


リビングに向かい、袋から買ってきたおにぎりやら、サンドイッチを並べた。

そして、また一服。

今日は吸う本数が多いな。

そんな事を考えていると、バスタオルを体に巻いた彼女が現れた。

流石に面食らう。


「…お嬢ちゃん、他人様の家の中で、バスタオル1枚で歩き回るのは如何なもんかと思うぞ」


「あっち暑かったから、こっちに来たの。

 あんた、一応女なんでしょ?

 じゃあ、別に問題ないじゃない」


逞しいというか、ズレてると言うか。

思わず苦笑いを浮かべてしまう。

若さ故の無謀さ、と言っても過言ではないか。


「一応じゃなくて、女だっての。

 同性の前でも、恥じらいくらい持てよ。

 てか、風邪引くからさっさと着替えろ。

 新しい下着も置いてあったろ」


「あの下着、あたしが貰っていいの?」


「いいから買ってきた。

 コンビニの下着だからって、文句言うなよ?」


「言わない、ありがとう」


随分素直になったな。

落ち着いてきたなら何よりだが。


その後、リビングでテレビを観ていると、着替えが終わった彼女が来た。

すっぴんの彼女は、更に幼く見えた。

綺麗な白い肌が、若さを知らしめている。

…若さが羨ましいなんて、断じて思っていない、断じてだ。


「クレンジングとか借りた。

 メイクするんだね」


「い~よ。

 化粧は出掛ける時くらいにしかしないさ。

 腹減ってるなら、好きなもん食え」


テーブルに並んだ食べ物を見て、彼女は目を輝かせる。


「これ、食べていいの?」


「ご自由にどうぞ」


ソファに座った彼女は、早速おにぎりに手を伸ばすと、慣れた手つきで封を開け、大きな口を開けてかぶりついた。

とても美味そうに食べている。


「おにぎり、そんなに美味い?」


「…まともなご飯、食べたの久々だったから」


私に逢うまでの間、一体どんな風に過ごしてきたんだろう。

気になったが、問い掛ける事はしなかった。


結局、腹ペコの彼女に、食べ物は全部あげてしまった。

彼女は嬉しそうに、全て綺麗に平らげた。


仕度が出来た彼女と共に、家を出た。

時刻はもうすぐ夕方に差し掛かる頃だ。


先を歩く私の後を、彼女は静かについてきた。

特に会話もないまま、駅に辿り着く。

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