第87話

宮本さんとはクラスが同じ事も手伝って、話す事も多かった。

あと、宮本さんは授業中は大体寝ている為、よくノートを貸してあげたり。


「寝ても寝足りないお年頃なのよう」


宮本さんの口癖だった。

たまに珍しく授業中に起きてるなと思ったら、先生に隠れて漫画を読んでいたり、携帯を弄っていたり。


「ゲームのイベントの時間と、授業が被るから嫌になるよ」


宮本さんはゲームが好きみたいで、休み時間は真剣な面持ちで携帯でゲームをしていた。

昼休みもやるのかと思いきや、「飯の時までゲームに振り回されたくない」との事。

食事と睡眠の時間は、しっかり確保したいというこだわりを持っていた。


いつだったか、高橋さんと宮本さんの3人で、駅前のゲーセンに行った事があった。

(彼女は部活の顧問に呼ばれてしまい、参加出来なかった)


UFOキャッチャーに、あたしの好きなキャラクターの人形があった。

欲しかったが、今までUFOキャッチャーをやって取れた試しがないから諦めた。

と、宮本さんがあたしに気付く。


「これ欲しいの?」


「うん。

 でも、取れないから諦める」


すると、宮本さんはおもむろに財布を取り出し、100円玉を機械に投入した。

1回目、2回目と失敗。

いいところまでいくのだが、人形はするっとアームをすり抜けてしまう。


「宮本さん、あたし大丈夫だから」


「いや、多分次で取れるよ」


3度目の正直。

宮本さんが言った通り、本当に人形を取る事が出来た。


「はいよ、あげる」


微笑みながら、取ったばかりの人形をあたしに差し出す。


「本当に貰っていいの?」


「舞にはいつも世話になってるから、そのお礼。

 お礼にしちゃあ安すぎるか」


どちらかといえば、お世話になってるのはあたしの方なのに。


「日頃の感謝。

 受け取って」


クールで、口数は他の2人よりは少ないけど聞き上手。

たまに宮本さんが話してくれる話は、あたし達のお腹が捩れるくらい面白い。

淡々と話すもんだから、余計に面白いのだ。


頭の回転も速く、言い方や手ぶり素振りも笑いを誘う。

話を聞き終える頃にはみんな涙目で、笑い過ぎて涙が止まらない事が多々あった。

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