第81話

「誰からも相手にされないくせに…。

 いつも独りのくせに。

 独りぼっちのくせに!」


確かにそうだ。

自分は誰からも相手にされなかったし、独りだったし、独りぼっちだった。


けれど、今は違う。

友達もいるし、独りぼっちではない。


よろけながら立ち上がる。


「それが何だって言うの?」


声は震えるけど。


「あたしが独りだろうが、誰かと付き合おうが貴女達には関係ない。

 あたしが貴女の気持ちを解ってあげられないように、貴女だってあたしの気持ちを解らないでしょ!」


彼女や家族以外の前で、大声を出したのはいつぶりだろうと、自分を客観視しているもう1人の自分がいた。


「まじでありえない!

 何で橋本さんはこんな奴と…」


「彼女の事を悪く言わないで!」


その人が言い終わるよりも速く、言葉を被せる。


「あたしの事を何と言おうと構わないけど、瞳さんの事を悪く言うのはやめて!」


「何かっこつけてんの!?

 まじでウザいんだけど!」


嫉妬、羨望が入り混じった目が、あたしを睨みつける。

立っている事さえギリギリのあたしは、何とかその場に踏ん張る事に集中する。


胸ぐらを掴まれた。

火事場の馬鹿力…とは意味合いはちょっと違うかもだけど、とにかく凄い力で引っ張られた。

よろけるも、踏みとどまる。


「最近髪型変えたり、化粧して、ちょっと綺麗になったくらいで調子に乗りすぎ。

 その顔、ボッコボコにしてやるから」


またしても押され、よろけて倒れた。


「あんたはぼっちだもん。

 誰も助けになんて来てくれないじゃん。

 惨めだね、ご愁傷様」


憐れみを微塵も感じられない瞳が、突き刺すようにあたしを見下ろす。


「誰かに助けてもらおうなんて思ってなんかない。

 あたしは独りでも戦える」


「強がりなんて無駄だよ、ば~か」


その人の足が、あたしの脚を踏みつけようと、自身の足を大きく持ち上げた。

残る2人は、あたしを笑っていた。

何が楽しいのかは解らない。


「2度と学校に来れなくなるくらい、ボコってやるから。

 今更謝っても許してあげないし」


「殴ったりして、気が済むなら殴ればいい。

 けど、あたしは明日も変わらず学校に来るから」


これからどんな酷い事をされても、言われてもいい。

学校(ここ)にもあたしの居場所があるのだから。


彼女が待っていてくれるのだから。

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