その肆
第67話
彼女の告白。
あたしの告白。
双方の気持ちが重なり、あたし達は付き合う事になった。
付き合う事がよく解らなかった事もあり、どうすればいいのだろうと考えたりもした。
が、2人の関係性が変わっただけで、何かが大きく変わった訳ではなくて。
彼女と予定が合った時は、2人で出掛けたりして。
夏休みの間は、週に1回は逢う事が出来た。
彼女が気になっていた店にランチを食べに行ったり、本屋さんでお互いの好きな本を買ったり。
何処へ行くにも、手を繋いで。
目が合えば、恥ずかしそうに微笑む彼女が愛しくて。
とても幸せな、2人だけの時間。
ただ一緒にいるだけで、こんなにも嬉しくなる。
同じ時間を過ごせる事が、とにかく嬉しくてたまらないのだ。
夏休みももうすぐ終わるという頃、彼女があたしの家に遊びに来る事になった。
それを母親に告げると、『やっと瞳ちゃんに逢える!』と大いに喜んだ。
誰かがうちに遊びに来るのは、小学生の時以来だ。
気合いを入れて部屋の掃除をし、彼女が来るのを待つ。
母親も気合いが入ってるようで、朝から彼女に出すお菓子やら料理やらを作っている。
あたしが『友達』を連れてくる、彼女に逢えるという事が相当嬉しいようだ。
掃除や片付けも終わり、着替えも済ませ、彼女の到着を待つ。
昼くらいに来る事になっており、そろそろやって来るだろうか。
駅まで迎えに行くと言ったのだが、暑いから大丈夫だよとやんわりと断られてしまったので、大人しく家で待つ事にしている。
あたしが暑さに弱い事を解っている、彼女なりの優しさだ。
家のチャイムが鳴った。
ソファーに座っていたあたしは、チャイムの音を聞いたら背筋がピンとなった。
そんなあたしを見た母親は、クスクス笑った。
玄関に行き、扉を開ける。
「こんにちは!」
あたしと目が合うと、にっこりと笑う。
「いらっしゃい」
あたしも笑う。
「暑いから早く入って涼んで。
今冷たいお茶出すね」
「ありがとう、お邪魔します。
初・舞の家~」
彼女を家にあげ、リビングに通す。
「こんにちは、お邪魔します」
「いらっしゃい、瞳ちゃん!
今日は来てくれてありがとう。
ゆっくりしていってね」
母親は満面の笑みを浮かべながら、彼女を迎えた。
こんなにご機嫌な母親は、久し振りかもしれない。
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