第48話

「舞と話す事ってほぼ無かったけど、こうして話してると、気持ちがほわわ~んってなる。

 なんだろ、舞は癒し系?」


「解る~。

 アタシもま~ちゃんと喋ってると、穏やか~な気持ちになるんだよね~。

 (ひ~ちゃんは、ま~ちゃんのそういうところも好きなんだろうけど)」


最後の方は、声が小さくて聞き取れなかった。


「とにかくさ、焦りは禁物。

 悪い方にはいかないだろうから、あんまり考えすぎちゃ駄目だよ」


注文していた料理が、テーブルに運ばれてきた。


「もりもり食って、心にも体にも栄養をつけるべし。

 いただきます!」


「す~」


「い、ただきます」


それから、3人でいろんな事を話した。

2人は地元の大学を受けるそうだ。

同じ大学を目指しているとの事。


彼女は陸上の推薦を貰っていたが、自ら取り消し別の大学を受けるらしい。

みんなしっかり考えながら過ごしている。


宙ぶらりんなのは、あたしだけだ。

が、2人はそんなあたしを咎める事はしなかった。



夏休みに突入し、家で過ごす時間が増える。

昼間は家族は仕事でいない。

家での1人の時間は好きだ。


課題をやりつつ、空いた時間は読書に費やす。

たまに高橋さんや、宮本さんからメッセージが届く(この前フレンドになった)

2人は夏期講習で忙しいそうだ。


彼女からは、相変わらず連絡はない。

自分から何かアクションを起こしてみようかと思った。

メッセージを送ってみようかと思ったのだが、なんて送ったらいいのか解らなかった。


彼女はどんな夏休みを過ごすのだろう。

部活には出てるのだろうか。

勉強三昧だろうか。

毎日のうだるような暑さで、体調を崩してはいないだろうか。


頭の中の片隅に、必ず彼女がいる。

彼女の笑顔を思い出すと、心が寂しさと切なさに挟まれる。


逢いたい。

顔が見たい。

声を聞きたい。


彼女に逢わなくなってから、もうすぐ2週間が経とうとしている。

時間ばかりが、虚しく過ぎていく。


自分の気持ちは、日々膨らんでいく。

彼女に対する想いが、風船のように大きくなるばかりだ。


伝える事が出来たら、きっととても楽だろう。

しかし、自分には勇気がない。

あと1歩、踏み出す事が出来たら…。

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