第27話

かくして、3人で昼食をいただく事になってしまった。

急な出来事に、あたしは1人で緊張している。

そんなあたしをよそに、2人は各々昼食を取り出す。


彼女はコンビニ弁当。

高橋さんは大きなお弁当箱。

…高橋さん、見た目はひょろひょろっとしてるけど、結構食べる人のようだ。

お弁当箱は、男の人用くらいの大きさだと思われる。


「じゃあ、いただきます!」


「す~」


「い、いただきます」


緊張は続いている。

学校でこうやって友達と昼食を食べるのは、一体いつぶりだろう。

簡単に思い出せない辺り、遠い記憶だという事を示している。


「あ、アタシは高橋萌。

 もえもえって呼んでね~」


「誰ももえもえなんて呼んでないじゃん。

 大体萌とか、も~ちゃんとかじゃんよ」


「あたしはもえもえって呼ばれたいんだけど、何故か誰も呼んでくれないんだよね~。

 言ってくれたら、満面の笑顔で萌え萌えキュンって言おうと思ってるのにさあ」


高橋さんの話を聞きながら、彼女はケラケラと笑っている。


「飯田さんは何て呼んだらいい?

 『いいだ』じゃなくて、『めしだ』って呼んだ方がいい?」


斜め上な発言に、目をぱちくりしてしまった。

話を聞いていた彼女は、更に笑っている。


「あ、その、舞で大丈夫です」


「じゃあ、ま~ちゃんって呼ぶね。

 改めてよろしく~」


高橋さんが右手を差し出してきたから、あたしも右手を差し出すと、硬い握手をされた。

高橋さんは楽しげに、繋いだ手をブンブンと上下に振っている。

暫くすると手を解放してくれて、お互い食事を再開する。


「こうやって舞と昼飯一緒に食べるの、初めてだね。

 すげ~嬉しい!」


相変わらず、翳りを知らない少年のような、屈託のない笑顔を向けてくれる。

その眩しい笑顔に、毎回目を細めそうになる。


「ま~ちゃんは教室で食べないの?」


誰かに何かを言われる訳じゃないが、なかなかどうして中学の頃のトラウマが邪魔をする。

ふとクラスの誰かと目が合うと怖くなり、心臓が嫌な感じにドクドクする。

自分の事を悪く言ってないか、嘲笑ってないか不安になる。


被害妄想…言われてしまえばそれまでなのだが。

自身の心の修復は難しく、自分では限界がある事は解っている。

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