その弐

第23話

流れ行く日々は、ゆっくりのようで速い。

かと思えば、時々遅い。

それは彼女に逢った時は時間の進みが速く、彼女に逢えなかった日は進みが遅く。

そんな感じ。


学校では相変わらずなあたしだけど、最近は学校に行くのが楽しみだ。

いや、正確には放課後の方が楽しみな訳で。


彼女が部活がない日は図書室で過ごす。

誰にも邪魔されない、2人だけの時間。

…なんだか、あたしが彼女を独占しているみたいだ。


この前はクッキーを作ったから、お裾分けで彼女にあげた。

彼女は目を輝かせながら、ラッピングされたクッキーを受け取ると、「まさか舞の手作り!?いよっしゃあっ!」とガッツポーズ。

ガッツポーズをするぐらいだから、余程クッキーが好きなんだなと思った。


「勿体無くて食べれないなあ…。

 いや、でも食べたい!」


ニコニコしながらクッキーを取り出し、一口噛ると、途端に更に笑顔になる。


「うっっっっま~」


言葉通りニッコニコで。

顔が溶けちゃうのではと思うくらいニッコニコで。


「そ、そんなに美味しい?」


ちょっと不安になってしまった。

もしかしたら、気を遣ってくれてるのでは…いや、彼女に限ってそんな事はないのだけど。



「舞が作ってくれるなら、何だって美味しいよ」



満面の笑みで言われ、あたしの胸は騒がしくなる。

この前からそうだ。

彼女の言葉や表情、仕草に胸がドキドキする。

その理由は未だに解らない。


下校の時間になり、一緒に学校を出る。

駅までは歩いて15分くらい。

僅かな時間でも、話せる事が嬉しい。


いつだっただろうか。

左側を歩く彼女の右手が、あたしの左手に触れた。

すると、彼女はするりとあたしの手を取ると、そのまま繋いだ。


少し背の高い彼女の顔を、少しだけ見上げながら見てみる。

目が合うと、何も言わずに微笑む彼女。

あたしは照れてしまい、何も言えなくなった。


駅に着くまでの僅かな間だけ、手を繋いで歩く。

みんなこうしているのだろうか。

彼女と手を繋いで歩きたい人は、沢山いる事だろう。


ホームに着くと、大体彼女が乗る電車が先に着く。

別れ間際、彼女は必ずあたしの頭を撫でてから電車に乗る。

そして、あたしが照れてあたふたしていると、彼女は悪戯な笑みを浮かべながら手を振る。


それがパターンになりつつある。

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