第17話

お弁当の中身は至ってシンプルなものにした。

玉子焼き、唐揚げ、タコさんウインナー、きんぴらごぼう、彩りの野菜。

そしておにぎり。


お箸を渡す前に、彼女は唐揚げを指でひょいっとつまみ上げると、大きく開いた口の中へ。


「うんま~っ!!」


子供のようにニコニコしながら頬張る姿は、まるで子供のようで。


「やっぱりさ、唐揚げは最強のおかずだよね。

 唐揚げ大好きなんだ」


味わいながら、しっかりと咀嚼している彼女を見て笑ってしまう。


「おにぎり、どれがいい?」


4つのおにぎりを見せると、彼女はその中から1つを選び、ラップを外しておにぎりにかぶり付く。


「昆布のおにぎりだっ!」


先程と同じように、ニコニコしながら頬張る。


「昆布のおにぎりも大好き!」


嬉しそうに幸せそうに食べている彼女を見ていると、心の底から嬉しくなる。


「…美味しい?」


「うんっ、すっごい美味しい!

 毎日舞のお弁当食べたい!」


さらりと嬉しい事を言われたのだが、恥ずかしさも込み上げてくる。


「私は学校じゃ学食ばっかだからさ、こうやってお弁当食べれる機会がないから、尚更そう思うよ。

 舞は料理上手だなあ。

 彼氏が羨ましいよ」


「あ、あたし彼氏なんていないよ…」


消極的な声で答えてしまった。


「そうなの?」


気のせいだろうか。

戸惑いと喜びが混ざった笑顔に見えたのは。


「まあ、私も彼氏はいないんだけどね。

 お互い独りもん同士だし、仲良くしよう」


彼女に彼氏がいないのは意外だった。

笑った顔が可愛いし、すらりとしてモデル体型だし、優しくて気さくだから、男の人は放っておかないんじゃないかと思うけども。


「周りの友達は彼氏の話題が多いけど、私は興味がないからさ。

 誰かと『付き合う』って、どんな感じなんだろうね」


それはあたしにも解らない。

もとより、あたしは友達と付き合う事さえ疎遠だったし、そもそも人の付き合い方さえ覚束ない。


「舞はどんな人と付き合いたい?」


不意な質問をぶつけられてしまった。

答えはすぐに出る筈もなく、暫く考えてみる。


「う~ん。

 優しくて、温かくて、包み込んでくれる人…とか?」


そう答えてはみたけれど、あたしの中の男の人はあまりいいイメージがない。

頭の片隅に、中学の頃に苛められていた時の事が浮かび、チクリと胸が痛む。

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