第13話
帰宅してから、早速手紙を読んでみた。
「まいおねえちゃんへ
おねえちゃんがおしえてくれたえほん
たのしかつたです
ぼくもおさかなみたいに、およげるようになりたいです
ようちえんのおともだちに、えほんをおしえてあげようとおもいます
おねえちゃん、ありがとう
えほん、だいじにします
ありがとうございました」
子供の字は、想いが真っ直ぐ込められているなと思った。
あたしの事を思いながら、一生懸命覚えたての字で綴ってくれた。
嬉しくて、涙が止まらなかった。
続いて、もう1通の手紙を読んでみた。
「飯田さんへ
卒業おめでとう。
貴女が保健室で過ごすようになり、最初は接し方が解らず戸惑う事もあったけど、話してみると普通の女の子だなと思いました。
国語の先生と楽しげに作家の話をしているのを、見ているのが好きでした。
私も本を読むのは好きですが、飯田さんには負けてしまいます。
本を読む事は世界を知る事にも繋がるし、知識を得る事も出来る。
教師が教える事、伝える事だけが全てじゃないと、私は思います。
これからも読書を続けて、沢山の世界を知って下さい。
新しい生活に不安はあるだろうけど、きっと友達が出来るだろうし、楽しい時間も増える筈。
人と関わる事を、恐れて遠ざけてしまわないで。
確証も無く『大丈夫』と言うのは不躾かもだけど、私は飯田さんなら上手くやっていけると思っています。
改めて、卒業おめでとう。
高校生活を楽しんでね」
綺麗な文字が綴られていた。
それはまるで、ピアノの旋律に似ているような気がして。
泣きながら読み返した手紙は、あたしの宝物になった。
今でも大切に取ってあるし、たまに読み返している。
先生の住所は知っているから、今度久々に手紙を書こうかと思う。
高校生活も1年が過ぎたけど、友達が出来ました、と。
その友達は明るく元気で、本が好きで、語り出すと止まらなくなる人。
あたしと同じ感覚の人で、とても親近感が沸くし、まだ知り合ったばかりだけど、仲良くなれそうだと。
先生があの日手紙に綴った言葉を、信じ続けていて良かったと…。
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