第8話

「あたし、友達とメッセでやり取りした事がなくて。

 瞳…さんが初めてで…。

 その、何て送ればいいのか解らないんだ…」


我ながら少々恥ずかしい。

自分は友達らしい友達はいないと、自ら言ってしまったのだから。

引かれるだろうか…。

言ってしまったものの、言わなきゃ良かったと後悔するも、時既に遅しである。


「じゃあ、私は舞のフレンド第1号って事?

 嬉しいな」


引く事も嫌な顔もせず、特に気にした様子もない。


「何でもいいんだよ。

 『何してるの?』とか、『ご飯食べた?』とかさ。

 部活以外だったら、大体すぐに返事返せるから、どんどんメッセしてね。

 私もするからさ」


勢いでフレンドになってしまったけど、迷惑ではないだろうか。

あたしと繋がってる事が、彼女の友達に知れてしまったら、仲間外れにされたりしないだろうか。

一抹の不安がよぎる。


「ひ、必要な事以外は、メッセ送らないようにするね」


「どして?」


「迷惑に…なりたくないし…」


彼女はキョトンとした顔になる。


「私とメッセしたくない?」


「そんな事はないけど…」


「じゃあ、メッセしようよ。

 いろんな事、話そう。

 学校じゃクラスも違うし、なかなか話せないからさ」


あたしと話したいという人がいた。

いつも日陰にいて、透明な存在に近いあたしに。


胸が熱くなる。

とても嬉しくなり、泣きそうになる。

涙が零れそうになり、必死に堪える。


「ちょ、どしたのさ!?」


彼女は慌ててリュックからハンドタオルを取り出し、あたしに差し出した。


「だ、大丈夫だから…」


「いいから使って。

 折角出したんだしさ」


ニコッと笑う彼女から、タオルを受け取る。

その優しささえ嬉しくて、遂に涙が落ちた。

それをタオルで拭いていく。


「私、ちょっと強引過ぎたかな。

 ごめんね」


「ち、違うの…そうじゃなくて…。

 ちゃんと友達が出来たの、久し振りで…

 あたし、こんな性格だし、話すのも上手じゃないし、いつも本ばかり読んでるから、クラスでも浮いてるし…。

 それなのに瞳さんが、あたしを見つけてくれて、友達になってくれたのが、優しくしてくれるのが、凄く嬉しくて…っ」

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