第84話

「そ、そろそろ花火の会場に行こうか」


祭りの会場を一通り見て回った。

時計を見ると、花火大会が始まるまでもう少しといったところだった。


「花火大会は何処でやるの?」


「海だよ。

 ちょっと歩くけど、足は痛くないか?」


「うん、大丈夫」


「じゃあ、行くか」


先程と同じく、手を繋ぎながら歩いている。

祭りの会場から少し離れると、賑やかさが遠退いていき、静かになっていく。

遠くの方で、波の音が聞こえる。


「さっき食べたたこ焼き、たこ小さかったな」


「仕方ないよ。

 あたしはクレープ食べれたから満足」


「最近甘いもん、食わなくなったなあ。

 昔は結構食ったんだけどなあ。

 酒を飲むようになると、甘いもんから遠ざかるなんて聞いた事があるけど、あながち嘘じゃないかも」


「甘いもの苦手になった?」


「いや、苦手じゃないよ。

 けど、昔みたいにバクバク食わなくなったかな。

 ビター系がいいかも」


「あたしは甘いもの好きだなあ。

 パフェとか、ケーキとか好きだし、たまにコンビニスイーツ食べたりするし」


「最近のコンビニの甘いもんは美味いよな。

 この前里美の家に飲みに行った時に、レアチーズケーキを一口くれたけど、めっちゃ美味かったし」


「涼ちゃんがスイーツ食べてる姿、あんまり想像出来ないなあ」


そう言って、白石はけらけらと笑った。


海に着くと、既にたくさんの人が集まっていた。

賑やかな声が溢れている。


「どの辺で見るの?」


「こっちこっち。

 特等席があるんだ」


石の階段を上り、防波堤を横目に見ながら、釣り場を歩いていく。


「よし、この辺でいっか」


2人並んで釣り場の端に腰を掛ける。


「もうすぐ始まるよ」


「あ、写真の準備しなきゃ」


巾着から携帯を取り出し、準備を整える白石。


「インスタに載せるん?」


「あたし、インスタはやってないよ。

 希美に送るんだ」


上原だっけか。

そういえば、幼馴染だったんだよな。


会場に始まりを告げるアナウンスが響く。

開会式をやってから、花火を打ち上げるようだ。

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