第83話

「ほいよ」


「凄い、本当に取れたね」


「射的は子供の頃から得意だからなあ。

 他にも欲しいのがあったら、とってあげるよ。

 どれがいい?」


「じゃあ、あのくまの人形かな」


よし、こいつもゲットだ。

コルクを詰めて、照準を合わせ、引き金を引く。

次で落ちるな。

2発目を喰らわせるも、ギリギリのところで落ちなかった。


「あらら、残念」


玉はあと1発か。


「白石、やってみる?」


「あたし、射的やった事無いから無理だよ」


手を左右に振り、困った表情を浮かべる白石。


「だ~いじょうぶ、教えてあげるからさ」


コルクを詰めた銃を、白石に渡す。


「そうそう、構え方は合ってるよ。

 もっと脇を締めて」


白石の背後に回り、指の位置や狙い方を教える。

ヤバい、体が滅茶苦茶密着してる。

意識してしまう。


「こ、こう?」


「もうちょい下にして…そうそう」


何とか平然を装ってみるも、心臓はばくばくだった。

自分の体と白石の体が、僅かにくっついている。


「よし、撃ってみ」


私の言葉を合図に、白石は引き金を引いた。

見事に人形に命中し、台から落ちた。


「やった、落ちた!」


白石が子供のように、瞳を輝かせながら私の方へ振り返る。

顔が近い事に気付き、お互いに照れてしまった。


「はい、どうぞ。

 お嬢ちゃん、彼氏にいいところ見せられて良かったなあ」


店の人がにこにこしながら、白石に人形を手渡した。

そして、店を離れた。


「あのおっちゃん、私の事を完璧に男だと思ってたみたいだな」


「涼ちゃんの事、か、彼氏って言ってたね」


思い返すだけでも、何だかくすぐったくて照れくさい。


「そんなに男っぽいかなあ。

 自分じゃあんまり解らんなあ」


「涼ちゃんはチャラ男だけど、その辺の男の子よりイケメンだと思うよ」


「チャラ男言うな。

 まあ、可愛いとか美人とかって言われるよりは、イケメンの方がいいかなあ」


そんな私の言葉を聞いた白石は、私の服の裾を軽く引っ張る。


「ん?どした?」


「…さっきの射的の時に、銃を構えてる涼ちゃん格好良かった」


ぼそりと白石が言った。

そんな言葉に、私は赤面してしまい、胸の高鳴りが酷くなり、手で胸を抑えたのだった。

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