第82話
大概私も恥ずかしかったし、照れくさかった。
けど、言った事に間違いはない訳で。
恐る恐る私の手を握った、白石の手は温かかった。
こんな風に誰かと手を繋いだのは、いつが最後だろう。
手を繋いで歩き出す。
目的の店に辿り着くと、白石の分のかき氷を買った。
私はといえば、近くの店でビールが売られているのを見つけ、ビールを買った。
「久し振りにかき氷食べたけど、やっぱり美味しいね」
嬉しそうにかき氷を口に運ぶ。
「浴衣に溢さないように気を付けてな」
暑い事、外で飲む事も手伝って、ビールがいつもよりも美味しく感じた。
「涼ちゃん、一口食べる?」
「ビール飲んじゃったし、味が混ざっちゃうからいらんかなあ」
私がそう言うと、白石は少しシュンとした。
あ、地雷踏んじゃったかな?
どうしたもんか。
白石が再び口にかき氷を運ぼうとした時、その手を取って私の口へと運んだ。
イチゴ味が口いっぱいに広がり、口の中が一瞬で甘くなる。
そして、冷たさもついてくる。
「甘っ!
かき氷ってこんなに甘かったっけ?
ごちそ~さん」
白石の手を離す。
白石は固まっていたが、すぐに顔を赤くした。
今日はよく赤くなるなあ、
「ふ、不意討ちずるい」
小さな声で、そう呟いた。
「あ、勝手に食ってごめんな」
「だ、大丈夫」
白石の顔は、かき氷のイチゴシロップに負けないくらい赤かった。
それから一通り店を見て回った。
どこもかしこも賑やかで、人が途切れる事がなかった。
「白石、射的やろうぜ!」
飲み終えたビールのコップと、食べ終えたかき氷のカップを捨てると、射的をやっているところへと向かった。
店の人にお金を払うと、玉代わりの小さなコルクを詰めた。
「白石、何か欲しいのある?」
「あのお菓子が食べたいな」
白石が指差すお菓子を狙い、すぐに撃った。
台から落ちなければ貰えないシステムなのは熟知している。
倒れたお菓子に再び撃ち込むと、お菓子は台から落ちた。
落ちたお菓子を拾った店の人が、私にお菓子を手渡す。
それを白石に渡した。
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