第78話

白石と関わるようになってから、早いもんで4ヶ月が経つ。

最初の頃は、こんな風に関わるようになるなんて、微塵も思っていなかった。


感情が顔にあまり出なかったし、掴めないところが多かった。

けど、時々寂しげな、悲しげな表情をするのを見掛けたり。


甘え方を知らないと言われた時は驚いた。

家族が嫌いと言った時も。

理由はこの前聞いたけれど…やりきれない気持ちは、今も心の片隅にある。


白石がどんな子かは解らなかったけど、少しずつ気持ちを表してくるようになった。

微笑む事も増えてきたと思う。

その大人びた笑みは、いつ見ても眩しい。


「涼ちゃんは、白石ちゃんに彼氏が出来たらどうする?」


「そりゃあ、喜ばしい事だし、良かったなって言うと思うよ」


「…それ、本心?」


里美が核心を突っつきまくる。


「え?」


「本当はそんな事、全然思ってないでしょ?」


「そ、そんな事はないぞ」


「白石ちゃんが彼氏にベッタリになって、涼ちゃんと関わる事がなくなったら寂しくない?」


「まあ、寂しいだろうね」


今まで自分の傍にいたのに、急にいなくなってしまったら、それはきっと寂しい。


「ねえ、気付いてる?

 今日の涼ちゃんの話の大半が、白石ちゃんの話ばかりだよ」


無意識だった。

言われてみれば、白石の事ばかり話していた。


「前はそんな事はなかったのにね。

 なんだかんだ言いながら、涼ちゃんも白石ちゃんに惹かれてるところがあるんじゃない?」


惹かれてる…?


「白石ちゃんから、目をそらせないでしょ?

 ふとした時に、白石ちゃんの事を考えたりしてない?」


確かにそうかもしれない。

晩御飯を食べてる時、「白石、ちゃんと飯食ってるかなあ」とか。

携帯にメッセージが届かない日は、「出掛けてんのかなあ」とか。


自分の日常に、少しずつ白石がレギュラー化されていた。

白石がいるのが、当たり前になっているのだ。


「アタシが見てる限り、白石ちゃんは涼ちゃんと関わるようになってから、結構変わったんじゃないかな。

 同時に、涼ちゃんも変わったんじゃないかなって思う」


私が変わった?

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