第77話

白石は母さんと茉莉に連れられ、別室に行ってしまった。

残された私は、花音と一緒に3人が戻るのを待つ。


花音は胡座をかいていた私の足に腰を下ろし、私を見上げた。


「ねえねえ、涼」


「ん?どした、花音」


花音と視線を合わせる。


「雪乃ちゃん、可愛いね。

 お姫様みたい」


「ははは、そんなん白石が聞いたら、顔を真っ赤にして照れるだろうなあ」


顔を赤くして照れる白石が、瞬時に頭に浮かぶ。


「花音、雪乃ちゃん好き。

 涼は雪乃ちゃん好き?」


好きか嫌いか。

無論、好きだ。

しかし、最近「好き」の意味が変わり始めているのではないかと思う事がある。


ちょっと前に、里美の家に遊びに行った時の事だ。

最近の事とかを話ながら、のんびりまったり飲んでいた。


「なあ、里美」


「ん~?」


「年下の子を好きになった事はある?」


何気なく質問してみた。


「あるよ~。

 高2の時に、1個下の子と付き合ったし」


「あれ?

 そんな事あったっけ?」


はて、そんな話を聞いた事はあったか?


「部活の後輩に告白されて付き合ったの」


「部活の後輩……部活の後輩!?」


待て待て待て、うちらが行ってた学校は女子高だぞ!?


「あれ?

 話してなかったっけ?

 アタシ、女の子とも付き合った事があるよ~」


「うおいっ、今初めて聞いたぞ!?」


里美が女の子と付き合った事があっただなんて。

何と言うか意外すぎる。


「言ったかと思ってた。

 人並みに付き合ってたよ。

 まあ、男の子と付き合うのと、あんまり変わらなかったかな」


そう言うと、缶ビールを飲む里美。


「そっか、いやはや、びっくりした…」


「てか、何で急に年下の子の事を聞いてきたの?」


痛いところを突かれる。


「いや、何となく…」


切れ味が悪い返答。


「気になる子でも出来た?

 白石ちゃんとか?」


またも痛いところにヒット。


「白石は生徒として好きなだけだよ」


「その割には、白石ちゃんには甘々だよね~」


にこにこしながら、私の反応を窺っている。


「ま、まあ、感情移入しすぎてるところはあるけどさ。

 白石は…ほっとけないかな」


放っておいたら、彼女はどうなってしまうだろう。

もとより、放っておけはしないだろうが。

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