第74話

「貴女が雪乃ちゃん?」


「あ、はい、白石雪乃と申します」


軽く頭を下げる。


「めっちゃ可愛いね!

 いや、美人だ!

 肌も真っ白で羨ましい!

 あたしは姉ちゃんの妹の茉莉。

 よろしくね!」


やや日焼けした、健康そうな人だ。


「この子はあたしの子!

 花音って言うの。

 ほら、花音も挨拶して?」


小さな女の子は、茉莉さんの後ろに隠れてしまった。

恥ずかしがっているのかな。

それより、あたしは小さい子と接した事がないんだけど、どう接したらいいんだろ。


「花音ちゃん、こんにちは」


とりあえず、挨拶をしてみた。

すると、ちらりとあたしを見ると、小さな声で「こんにちは」と言ってくれた。


「花音、このお姉ちゃんは雪乃ちゃんっていうんだって」


「雪乃…ちゃん」


「よろしくね」


あたしの言葉に、花音ちゃんはにこっと笑ってくれた。

接触は成功したらしく、そっと胸を撫で下ろす。


「てか、姉ちゃん寝てんの?

 花音、起こして差し上げて!」


花音ちゃんは先生を見つけると、走って先生に近付いた。

そして、思い切り先生に抱き付く。


「涼!起きて!遊ぼ!」


大きな声ではきはきと、言葉を口にする花音ちゃん。

花音ちゃんの言葉が、眠っていた先生の耳に届いたのか、先生がうっすらと目蓋を開く。


「んあ~?

 お、花音か。

 また大きくなったなあ」


花音ちゃんの頭を、わしわしと撫でる。

撫でられている花音ちゃんは、とても嬉しそうにしている。

体を起こした先生は、茉莉さんを見る。


「茉莉、久し振りだな。

 ちょっと太ったか?」


「ふ、太ってないし!

 確かに最近食欲旺盛だけど!

 姉ちゃんが痩せ過ぎなんだよ!

 てか、髪切っちゃったの?」


「あ~、邪魔だから切った」


「折角綺麗に伸ばしてたのに~、勿体無いな~」


言いながら、茉莉さんは口唇と尖らせる。


「髪なんざすぐに伸びるって。

 まあ、暫く伸ばす気はないけど」


そう言って、欠伸を1つ。

先生と茉莉さんの顔を見比べてみる。

…やっぱり似ていない。

気のせい…?

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