第71話

車から下りると、それぞれの鞄を取り出す。

あたしは先生の後ろを歩いた。


先生の実家は、2階建ての一軒家だった。

ちょっと年期が入っているようにも見えるが、そこまで古そうな感じではない。


先生が玄関のインターホンを鳴らすと、中から女の人が出てきた。


「おかえり~」


「ただいま。

 あ、この子が電話で話した子?」


先生が少し横にずれると、あたしはその人と対面する。


「は、初めまして。

 白石雪乃と申します。

 お世話になります」


言い終わると頭を下げた。


「雪乃ちゃん、いらっしゃい。

 あたしが涼の母親の香住よ。

 短い間だけど、どうぞよろしくね」


頭をあげると、やわらかい笑顔を向けてくれた。

優しそうな人だ。


「ほらほら、上がって。

 疲れたでしょ?

 今麦茶を用意するから、居間の方に行って」


靴を脱ぎ、家の中へと上がる。

畳が多い。

フローリングは廊下くらいだ。


居間にはテレビ、大きな木のテーブル、座布団、仏壇、棚がある。

縁側があり、小さな庭もある。


先生が座布団を私に1枚敷いてくれた。

早速腰を下ろす。

先生は鞄を置くと、キッチンの方へ行ったかと思うと、灰皿とお菓子が入ったお皿を持って戻ってきた。


「正座はしないでいいからね」


と言われたものの、足を崩していいのやら。


「はい、どうぞ」


先生のお母さんが居間に来て、氷がたくさん入った麦茶をテーブルに置いた。

3つのコップを乗せたお盆をキッチンに置いてくると、先生の隣に腰を下ろした。


「ずっと座りっぱなしで疲れたでしょ?」


「いえ、意外と大丈夫でした」


「貴女達が住んでるところに比べたら、こっちはド田舎よね。

 コンビニもちょっと歩かないとないし。

 不便に思う事があるかもね」


先生のお母さんは、言いながら笑う。


「自然がいっぱいで、素敵な所だと思いました。

 海もあるし、空気も美味しいし、羨ましい限りです」


「こっちは海産物が支流だけど、雪乃ちゃんは食べれないものはある?」


「好き嫌いは特にないです」


「それなら良かったわ。

 夕飯は楽しみにしててね」

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