第69話

気を遣ってくれてたんだ。

さりげない気遣いが出来る人。

ほんと、優しい人だなあ。


サービスエリアに着き、車を停める。


「私は煙草吸ってくる。

 白石はトイレ大丈夫か?」


「ん、トイレ行ってくる」


先生と一旦別れて、トイレへと向かった。

夏休みだし、お盆休みもあり、結構混んでいるな。


トイレを済ませ、自販機でお茶を2本買ってから喫煙所に向かう。

あ、いたいた。

周りにいる男の人と違和感がないくらい、先生は男の人に見える。


「おかえり」


煙草を吸い終えた先生が、こちらに来た。


「これあげる」


お茶を1本先生に渡す。


「お、ありがとな。

 よし、じゃあドライブ再開だ」


再び車に乗り込み、車を走らせる。

ラジオの交通情報を聞きながら、先生の実家を目指す。


時々先生の横顔をちらりと見る。

機嫌がいいのか、時折鼻歌を歌ったりしている。


「あと1時間くらいで着くかな。

 もう少しの辛抱な。

 地元に着いたら、飯食おう。

 腹減ったっしょ?」


「まだ大丈夫だよ」


「後で絶対腹減るって。

 何食おうか。

 白石は何食いたい?」


「ん~…冷たいの」


「ざっくりだなあ」


あたしの返答に、先生はけらけら笑う。


「涼ちゃんは何食べたい?」


「暑いから冷やし中華とか?

 あ、回転寿司もいいなあ」


食べ物の話をしていた事もあってか、小腹が空いてきた。

朝ごはんはパンを1つ食べたきりだ。

もう少し食べておけば良かったかな。


「あ、そうだ。

 祭りも花火大会も今日だってさ。

 祭りはもうやってるんじゃないかな」


「お祭り楽しみ」


「うちらが住んでる所よりは涼しいけど、それでも暑いから、祭りは夕方に行こうか」


「うん、解った」


「久々に射的でもやるかなあ。

 白石は射的はやった事はある?」


射的か、やった事はなかったな。


「ないよ」


「じゃあ、一緒にやろうよ。

 なかなか楽しいぞ」


「頑張って店の人を打たないようにするね」


「じゅ、銃を人様に向けてはいけませんよっ!?」


そんな会話をして、また笑った。

今日もよく笑う。

前はこんなに笑う事もなかったな。

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