8月/想い(前編)

第68話

真夏の暑さは相変わらずで、早く涼しくならないかなと思い続けている。

寒さは重ね着をしたり、ホッカイロを貼ったりすれば、いくらでも寒さはしのげる。

が、暑さはといえば、全裸になっても暑い。

クーラーがなければ、どうにもならないもんだ。


年々気温が上がっていると思うのは、あたしだけではない筈。

温暖化、何とかならんのかな。

このままじゃ、いつか50度くらいまでいっちゃうんじゃなかろうか。


そんな事を考えながら、ぽてぽてと道を歩く。

目的地はすぐそこだ。

見慣れない軽ワゴンが停まっているのが目につく。

そして。


「よお、おはろ~」


先生がちょうどマンションのエントランスから出てきた。

Tシャツにスキニージーンズという、いつも通りラフな格好だ。


「おはよ、涼ちゃん」


「時間通りだな。

 よし、じゃあ行こっか」


先生は運転席に、あたしは荷物を後部座席に置いてから、助手席に乗り込んだ。


「さっき道路の混雑具合を見てみたけど、そこまで混んでなさそうだから、順調にいけば2時間くらいで着くと思う。

 トイレ行きたくなったら、すぐに言ってな」


車のエンジンをかけ、走り出す。

車に乗るのは、引越しの手伝い以来だ。


「この車はどうしたの?」


「友達から借りた~。

 里美から借りようかと思って頼んだんだけど、駄目だったからさ。

 自家用車は欲しいんだけど、そこまで車使わないから、レンタカーとか友達から借りるんで、事足りちゃうんだよな~」


「涼ちゃんは車が似合うよね」


「そうか~?

 まあ、車は嫌いじゃないし、似合うと言われると嬉しいな」


「ヤン車とか似合いそう」


「おいいぃっ、どういう意味だよっ!?」


会話も弾み、車内は賑やかだ。

高速道路に入ると若干渋滞しているけど、ゆっくり進んでいる。


「次のサービスエリアで休憩すっかあ」


そういえば、先生は全然煙草を吸ってないな。


「煙草吸わないの?」


「白石の服に煙草の匂いついちゃうだろ?

 折角可愛い服着てんのに、煙草臭いのはやだろ?」

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