第67話

「下着も無いし」


「流石にパンツは貸してあげられないなあ」


「とりあえず、一旦家に帰るよ。

 荷物取りに行ってくる」


「じゃあ、アタシのチャリ使って。

 その方が早いし」


「ん、ありがと」


雪ちゃんを見送ると、とりあえずお風呂の準備を済ませた。

何だろな、久々に楽しくて楽しくて。

雪ちゃんも楽しそうで良かった。


20分くらい経った頃、雪ちゃんは戻ってきた。

片方の手には鞄を、もう片方の手にはコンビニのビニール袋をぶら下げている。

リビングに行き、袋からごそごそと何かを取り出す。


「家にあったお酒、持ってきちゃった」


「まさかのアルコール!?」


「たまには飲もうよ」


確かに前に雪ちゃんが泊まりに来た時、お母さんが少しお酒を飲ませてくれたけど。


「お母さんにバレないかなあ」


「飲み過ぎなければ大丈夫じゃない?」


と、アタシの携帯が鳴った。

タイミングよろしく、お母さんから電話だった。


「もしもし。

 うん、うん。

 今雪ちゃん来てる。

 うん、泊まってくって。

 うん、解った。

 じゃあね」


電話を切ると、雪ちゃんがこちらを見つめていた。


「おばちゃん?」


「うん。

 今日は仕事が終わったら、みんなと飲みに行くから遅くなるって」


「おばちゃん、また朝までコースだね」


「お酒強いからなあ。

 あ、お父さんは出張でいないから、今夜は2人きりだよ」


「そっか、2人きりという事は、あたしはやっぱり希美に襲われるんだ」


「だ、だから襲わないよ!?」


何だか雪ちゃんに遊ばれてるような。


「と、とにかく、今夜は女子会だね」


「女子会って何するの?」


「恋ばなとか?」


「恋とバナナについて深く語り合うと」


「恋だけでいいと思うよ!?」


雪ちゃんはまた吹き出す。


「雪ちゃん、アタシの反応を見て楽しんでるでしょ?」


「あ、バレた?」


「バレバレだよ!

 とにかく、お風呂入っちゃおう」


今夜は長く楽しい夜になりそうだ。

雪ちゃんの話を、もっとたくさん聞きたい。

笑顔をもっと見たい。


お盆の話も、今度聞かせてもらわなきゃ。

少しでも先生との距離が、近付きますように。


「ほら、希美。

 お風呂入るんでしょ?」


「あ、今行く!」



長い夜が、女子会が始まる。

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