第65話

雪ちゃんはやわらかい笑顔を浮かべた。

今まで見た笑顔の中で、1番素敵な笑顔だった。


「女の人を好きになったなんて聞いたら、普通はもっと驚いたり、嫌な顔をしたりするもんじゃない?」


「そうなの?

 誰が誰を好きになるのは自由なんだし、アタシは雪ちゃんが幸せならそれでいいもん」


そう、1番は雪ちゃんの幸せ。

辛い想いをたくさんしてきた雪ちゃんだからこそ、尚更幸せを願うし望む。


「さっき…お盆に逢うって言ったじゃない?

 実は…先生の実家に一緒に行くの」


先生の…実家ぁあああっ!?


「いやいやいやっ、いきなりすぎやしませんかっ!?

 先生を下さいって言うのっ!?」


「ちっ、違うってば!」


話の経緯を聞き終わる。


「そっか、そういう事だったんだ。

 いきなりぶっ飛んだ展開になったのかなと思った」


「希美がぶっ飛んだ解釈をしたからびっくりしたよ」


「ごめんごめん。

 でも、花火大会にお祭りに海かあ。

 そんでもって、先生とずっと一緒。

 かなり贅沢だね」


先生のファンが聞いたら、発狂する事間違いなしだ。


「うん。

 あたしも最初は行かない方がいいかなって思ったんだけど…。

 でも、少しでも先生と一緒にいたいし。

 だから行く事にしたんだ」


「いいじゃない、折角誘ってもらったんだしさ。

 いっぱい楽しんでおいでよ。

 こんな機会なんて、滅多にないんだし」


「あたし…先生のご家族と、ちゃんとお話出来るかな」


「最初は戸惑う事もあるかもだけど、きっと大丈夫だよ。

 あ、泳ぐなら水着が必要だね。

 今度一緒に買いに行こうよ」


「ありがと」


この経験で、雪ちゃんがもっといい方向に変わってくれたらいいな。

雪ちゃんは寂しがり屋だけど、優しくていい子だから、もっと素敵な人になれる筈。

話ベタも克服出来たら…なんて、それは高望みしすぎかな?


「洋服や下着も欲しいから、付き合ってくれる?」


「勿論!

 アタシも選ぶの手伝ってあげる!」


「希美、テンション高過ぎ」


そう言って、雪ちゃんはまた笑った。

たくさん笑顔が見れて嬉しくなる。

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