第62話

「そういえば、雪ちゃん何かあった?」


「何か?」


俯いていた顔を上げる雪ちゃん。


「うん。

 雪ちゃんからメッセ来るの珍しかったし、何かあったのかなって」


思った事を、そのまま口にしてみた。


「えっと…」


先程のように、雪ちゃんは俯いた。

しかし、悲しげな表情ではない。

頬が少し赤いような。


「その…」


その先の言葉を、なかなか口に出来ないでいるようだ。


「す、好きな人が…出来…た…」


その声は、とてもか細かったけど、かろうじて聞き取る事が出来た。


「好きな人?」


復唱してみると、雪ちゃんは頬を更に赤くさせた。

こんな雪ちゃんは初めて見た。


「うん…」


雪ちゃんが付き合う人は、恋愛感情を持つ事のない人ばかりだった。

なんとなく誰かと付き合っていたようにも思えた。

雪ちゃんから告白する事はなく、相手から告白され、流れるままに付き合う感じだったと思う。

長続きは…残念ながらした事はない。


「雪ちゃんが好きになる人…気になる」


純粋に興味が出てきた。

興味本位で聞いてはいけないかもしれないけど。


「と、年上の人」


年上…大学生とかかな?


「大学生?」


「違う、もうちょい年上」


「じゃあ、社会人?」


「そんな感じ」


随分大人な人を好きになったようだ。

いつも付き合う人は…あの人に紹介される人だった筈。

深い付き合いをしている訳じゃないし、アタシは関わりこそないけど、あまり好きではない。

その人が紹介する人は、大体同い年か、ちょっと年上の人が多かった筈。


「雪ちゃんが人を好きになるのは、すっごくレアだね」


本当にレアだと思う。

今まで雪ちゃんから、こんな話をされる事こそがレアだけど。


「そうだね」


さっきから、頬が赤く染まったままだ。

その人に余程お熱のご様子。


「どんな人なの?」


「優しくて…いろんな事を教えてくれるというか。

 あたしの知らない事を、解るように教えてくれる、かな」


「逢ったりしてるの?」


「うん、この前逢ったばかりだよ」

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