第58話

コンビニで朝御飯を買い、先生の家に戻る。

道中とにかく暑くて、クーラーの涼しさが恋しくなる。


「暑い…」


「夏だからなあ」


先生はあたしに歩幅を合わせて歩いてくれている。

脚長いなあ。


「白石は海とかプールとか行かないのか?」


「去年希美とプールに行ったけど、ナンパがうざくてちゃんと遊べなかった記憶しかない」


「遊び1つでも苦労するんだな」


言いながら、先生は苦笑いを浮かべる。


「涼ちゃんはプールとか、海とかって行くの?」


「海は実家の近くにあって散歩程度に行くけど、泳ぎはしないしなあ。

 プールは…最後に行ったの高校生の時じゃないかな」


「家の近くに海があるっていいなあ」


「そうか?

 窓開けとくと塩臭いよ?」


「こっちは海がないから、やっぱり憧れると言うか、羨ましいと言うか」


「あ~、確かにこっちは海ないもんなあ。

 県を跨がなきゃ海ないし。

 地元はさ、冬は空気が澄んでるから、こっちよりも星がよく見えるんだ。

 海の水面に星が映って綺麗なんだよ」


そういうのって、映画とか漫画とかだけかと思っていた。

海か、何年も行ってないな。

もとより、一緒に行く人もいないのだけど。

希美は最後の大会もあるし、なかなか逢えないし都合もつかないだろうな。


先生の家に着くと、涼しい風が出迎えてくれた。

全身汗まみれで、早くも体が汗でベタベタする。


テレビをつけた先生は、換気扇の傍に行き、本日最初の煙草に火をつける。

あたしは床に座り、買ってきたお茶を飲み、喉の渇きを潤した。


「引っ越しを手伝ってくれたお礼をしないとだな」


先生の方へ体を向ける。


「お礼、何がいい?」


「あたしはこの前の看病のお礼をしただけだし、お礼はいらないよ」


「ん~、でもさ、すげ~手伝ってくれたしさ。

 やっぱお礼がしたいよ。

 何がいいかな。

 飯でもご馳走しよっか。

 あ、高い店は無理だぞ?」


お礼と言われてもなあ。

急には浮かばない…あっ。


「花火大会と、お祭り…」


昨日でお祭りは終わってしまった。

花火大会は雨で中止になったし。

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