第52話

けらけらと笑いまくる白石。

くそ、ドストライクだったなんて言えない。


メイドの白石はとにかく可愛くて、それでいて大人の色気が滲み出ていた。

しかもウェイトレスじゃない、ちゃんとしたメイドの格好…ずるすぎる。


ヴァンパイアの白石は、メイド以上に色気が滲み出ていた。

素直に可愛いと思った。

思ったけれど。


何だか白石に負けてるような気がした。

大人が子供に負けるなんて。

何だか悔しくなってきたぞ。


まだ笑っている白石を抱き寄せ、脇の下をくすぐってみた。


「あははっ、ちょ、涼ちゃん、やめてってば!」


子供のように笑いまくる。

更にくすぐってみる。


「きゃははっ、くすぐったいって!」


身を捩りながら逃げようとする白石が、逃げないようにくすぐりまくる。

仕返しだ、仕返し。

大人気ないのは解っているが、負けっぱなしなのはなんとなく嫌だ。


暗いからよくは見えないけど、きっと無邪気な顔をして笑っているんだろうな。

今明るかったら良かったのに。

笑った顔、見てみたかったな。


「参ったと言わないとやめてやんない」


「参った!めっちゃ参ったから!」


漸くくすぐるのをやめてあげた。

笑いすぎた白石の息は荒かった。


「もう、くすぐるなんて酷いよ」


「大人をからかった罰じゃ」


「涼ちゃんは子供だなあ」


「白石の方が子供だろ」


すると、白石が私の上に乗っかってきた。


「上に乗るなよ。

 てか、何で乗っかってんだよ」


前言撤回。

暗くて良かった。

今自分の顔は、照れて真っ赤な筈だ。


「あたしだけくすぐられるのはフェアじゃないもん」


「残念でした。

 私はくすぐり効かないよ」


白石が拗ねたのが、雰囲気で解った。

白石も負けず嫌いのようだ。


「弱味はないの?」


「あったとしても、簡単に言う訳ないだろ。

 ほら、早く下りなって」


言ったところで、素直に言う事は聞かないだろうな。

予想は見事に的中。

下りてはもらえなかった。


探り探り、白石の手が私の頬に触れた。

少し熱を帯びていて温かい。


その手がゆっくりと髪を撫でる。


「何してんよ」


白石の手を掴んだ。

すると、そのまま手を繋がれてしまった。

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