第49話

「じゃあ、最初に白石が選んで?」


表側を伏せた状態で、カードを床へ並べていく。


1枚選んでみる。


「カードはお互いに見せっこしよう。

 そのまま見ないで待ってて」


そう言うと、先生はカードを吟味する。

その表情は真剣そのものだ。

きっと勝負事が好きなんだろうな。


「よし、じゃあカードを開こう。

 せ~のっ!」


同時にカードを捲った。

先生はダイヤのエース。

あたしはジョーカー。

つまり、あたしの勝ち。


「やった、あたしの勝ちだ」


「まじかよっ!?

 こういう勝負には強い方なのにっ!」


先生はかなり悔しがっている。

相当悔しいご様子だ。


「じゃあ、一緒に寝ようね、涼ちゃん」


勝った事が素直に嬉しい。

今日は運が向いていたようだ。


あたしが先にベッドに行くと、諦めたのか、電気を消した先生もベッドにやって来た。


「涼ちゃん、実は負けず嫌い?」


「ん~、わりとそうかも。

 だ~っ、悔しいなあ」


口唇を尖らせて、悔しそうにしている。

余程悔しかったようだ。

高校生相手に本気になる先生は、少々大人気ないような気もするけど、不貞腐れているところも何だか可愛い。


「ね、腕枕して?」


「なしてさ?」


「勝った人の特権?」


「そんなルール聞いてないぞ」


「腕枕くらいいいじゃない。

 ね、お願い」


先生は溜め息を1つ吐くと、腕を伸ばした。

そこに頭を乗せてみる。

男の人とは違う、程よくやわらかい腕。


「こういうのって、恋人同士がやるもんじゃないのか?」


「別にそんな事はないんじゃない?」


「女の子に腕枕するの、白石が初めてだよ」


「あたしも女の人に腕枕してもらうの、涼ちゃんが初めてだよ」


くすくすとあたしが笑うと、先生も笑った。


「何だか変な感じだなあ。

 白石は生徒だけど、友達みたいな感じだ。

 気楽に接する事が出来るし、話しやすいし」


「あたし、話しやすいかな?」


友達に、そんな事を言われた事はない。


「私は話しやすいと思うぞ。

 話してて楽しいし」


「大した話もしてないのに?」


「それでもさ、何か楽しいよ」


先生はあたしの頭を撫でる。

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