第47話

お弁当を食べ終わり、容器を片付けた。

先生は換気扇の元へ行き、また煙草を吸い始める。

煙草ってそんなに美味しいのかな。


テレビを見ていると、先生は缶ビールを持って戻ってきた。


「あたしも飲みたい」


「はいどうぞ、って渡せる訳ないだろ。

 大人になるまで我慢しなさいな」


プルトップを開けると、勢い良く飲みだした。

その横顔を見つめる。

美味しそうに飲むなあ。


「ふあ~っ、美味いっ!」


満面の笑みを浮かべている。

ご満悦のご様子だ。


先生は缶ビールをテーブルに置き、テレビのリモコンを弄りだした。

その隙に缶ビールを手に取り、一口いただいた。


「あっ、こらっ!」


気付いた先生は、あたしからビールを取り戻す。


「ん~、キンキンに冷えてて美味しいなあ」


「子供がビールを美味いとか言ってんじゃないっての。

 全く、油断も隙もないんだから」


呆れながら、再びビールを飲む先生。


「あ、本日3度目の間接ちっすだね」


「ぶふおっ!」


先生は盛大にビールを吹き出した。


「人が飲んでる時に、変な事を言うなよ」


「あたし、変な事言った?」


「間接ちっす」


「3回もしたら慣れるでしょ?」


「慣れるもんなのか?」


言いながら、先生は手の甲で口元を拭う。

照れているのか、あたしと視線を合わせようとはしない。


「涼ちゃん、可愛いね」


「子供が大人に可愛いって言うなよ」


「子供じゃないもん」


「大人でもないだろ」


そうだね、子供でもないし大人でもない。

所謂微妙なお年頃ってやつ。


2本目のビールを飲み終えた先生は、ベッドに横になった。


「あ~、今日は疲れたなあ」


欠伸を1つ。


「白石は若いから、疲れが残らないんだろうなあ。

 若さが羨ましいぜ」


「おっさんみたいな事、言わないでよ」


思わず笑ってしまう。


「白石もその内この辛さが解るって。

 寝ても疲れが取れないしんどさ、まじで切ないんだから」


「そこまで歳いってないでしょ?」


「10代からしたら、20代なんてババア扱いだろ?」


「そんな事ないよ」


また笑ってしまう。

歳の事なんて考えた事はない。

それくらい、先生は対等に接してくれるから。

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