第46話

持参したTシャツと短パンに着替え、髪をドライヤーで乾かしてからリビングに行くと、クーラーの涼しい風があたしを包む。

そして、微笑みながら迎えてくれた先生。

なんて事のない事かもしれないけど、あたしにはとても嬉しく思えた。


「さっぱりしてきたか?」


「うん、してきた」


先生の隣に腰を落とした。


「先にお弁当食べてて良かったのに」


「フライングはよくないじゃん?

 それに一緒に食った方がいいじゃん。

 折角一緒にいるんだからさ。

 お互い独り身だし、誰かと一緒に夕飯を食べるって、なかなかないし」


確かにその通りだ。

夕飯は1人で食べるのが普通だった。

誰かと一緒に夕飯を食べるのは、いつぶりだろうと考えてみるも、すぐに思い出せなかった。


先生は2つのお弁当をレンジで温め、こちらに戻ってきた。


「よっし、じゃあ食おうか」


先生は嬉しそうにお弁当の蓋を開けて、割り箸を用意する。


「いただきますっ」


「いただきます」


あたしも蓋を開けて、割り箸を用意した。

余程お腹が空いていたのか、先生は元気良くおかずを口の中へ運んでいく。

まるで男の子のようだ。

その姿を見て、軽く笑ってしまった。


「ん?どした?」


「涼ちゃんが逞しくお弁当食べてるなって思って。

 いい食べっぷりだね」


「はははっ、汗水垂らして作業したせいかな、いつもより美味く感じるよ」


にっこりと微笑む先生は、少年のようだ。


「ベタだけど、涼ちゃん、口元にご飯粒ついてる」


「え、まじかっ!?」


笑いながら、先生の口元についたご飯粒を取ると、そのままあたしの口の中に入れた。

そんなあたしを見て、先生は赤面している。


「は、恥ずかしいところを見られた…。

 てか、白石、そういうのをナチュラルにするなんて…」


「何が?」


「その、頬っぺたについた米粒を取って、そのまま食べるとか、そういうのって彼女が彼氏にするイメージと言うか」


言いながら、先生は更に赤面した。

なんだか可愛いな。


「そうなの?

 あんまり気にした事なかったな」


「ナチュラルに出来た白石が凄いよ」


相変わらず、先生の顔は赤かった。

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