第45話

先生の部屋に戻る。


「シャワー浴びたいなあ」


Tシャツの胸元をつまみ、ひらひらと靡かせる先生。


「白石は先に食べてていいよ。

 ちょっくらシャワー浴びてきちゃうからさ」


「狡い、あたしもシャワー浴びたい」


あたしも汗で全身びしょ濡れだった。


「でも、着替えはないだろ?」


「こんな事もあろうかと、お泊まりセットを用意して来ました」


先生に鞄を見せる。


「やけにデカい鞄を持ってきてるなと思ったら、そういう事だったんか!?」


「抜かりないでしょ?」


ちょっとだけどや顔をしてみる。


「いやはや、流石…いやいやいや、ちょっと待て。

 お泊まりセットを用意って…まさか、泊まる気か!?」


「そのつもりだけど…駄目?」


「だ、駄目じゃないけど…。

 車で白石の家まで送ってくつもりでいたんだけどな」


「そっか…。

 じゃあ、帰った方がいいよね。

 涼ちゃんも疲れてるし…」


すると、先生は腕を組み、目蓋を閉じ、何かを考える素振りを見せた。

そして、ゆっくりと目蓋を開くと、あたしを見た。


「いいよ、泊まっていきな」


「いいの?」


「うん。

 疲れた体で運転するのも、多分危ないしな」


やっぱり先生は優しいし、かなりのお人好しだ。

普通なら、嫌な顔の1つでもするだろうに。

あたしもちょっと強引すぎたな。

先生の優しさに甘えすぎだ。


「とりあえず、シャワー浴びてきちゃうわ」


すれ違い様にあたしの頭を軽く撫でた。


「涼ちゃん」


「ん?」


「…泊めてくれてありがと」


先生はにこっと笑うと、もう1度あたしの頭を撫でた。


先生はタオルと着替えを持って、お風呂場に向かった。

程無くして、シャワーの音が聞こえてきた。


先生がお風呂から出てくると、入れ替わりであたしもお風呂に入った。

汗でベタついた体をシャワーで流していく。

髪の毛は汗で少しギシギシしたから、シャンプーで丁寧に汚れを洗い落とした。


漸くさっぱりする事が出来ると、お風呂場を出た。

先生から借りたタオルで、体についた水分を拭っていく。

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