第43話

賑やかなまま、目的地に着いた。

1LDKのマンション。

少々古いが、前のアパートよりは広いし快適だ。

トイレと風呂も別だし。


車から降りると、業者さんに飲み物を渡す。

業者さんも汗だくで、飲み物を渡すと「ありがとうございます」と早口で言い、すぐにキャップを開けて飲みだした。


一息入れてから作業を再開する。

白石も頑張って手伝ってくれた。

華奢な体で、一生懸命段ボールを運んだりしてくれている。


大した荷物はないのだが、漫画本が多いのがネックだった。

巻数の多い漫画ばかりだ。

が、捨てるつもりは毛頭ない。

どれもこれも、大切な代物だ。


ガス、水道は既に使えるように手配してある。

後で早速風呂に入るとしよう。

頑張れば、人2人くらいは入れる広さだ。


ベッドも奮発して、新しいものを買った。

以前のものよりも少し広い。

思う存分寝転がれる。


我儘を言えるなら、本当はソファーが欲しかった。

が、置くスペースがないから諦めた。

ショッピングモールで見かけた、あの黒のソファー欲しかったなあ。


テレビも設置し、テーブルも置いたし、ラグも敷いた。

パソコンは後で設置して、設定するとしよう。

そうだ、ゲームも後で設定しなくては。


食器類は僅かしかない。

里美がたまに遊びに来るくらいだし、来客は殆どないからだ。

皿とかコップって、結構場所を取るんだよな。


タンスはここでよし。

あ、そうだ。

服もしまわなきゃな。

クローゼットにも、色々しまわないと。

収納場所が多いって、こんなにありがたかったのか。



全ての作業が終わったのは、夕方に差し掛かった頃だった。

業者さんにお礼を言う。

すると。


「あ、あのっ」


3人いた業者さんの1人の若い男の子が、白石に声を掛けた。


「何ですか?」


白石はきょとんとしている。


「あ、あのっ、そのっ、で、電話番号の交換をしていただけませんかっ!?」


おいおい、業務中なのにいいのかよ。

思わず溜め息が零れる。


白石は私の隣に来たかと思うと、自身の腕を私の右腕に絡めた。

そして。



「あたし、好きな人いますから」

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