第42話

業者さん達の飲み物も買い、再び車を走らせる。

差し込む陽射しが暑いな。

エアコンを少し強めにする。


「白石、寒くないか?」


「うん、大丈夫」


アメリカンドッグを頬張りながら答える白石。

と、目が合う。


「一口食べる?」


差し出されるアメリカンドッグ。


「いやん、間接ちっすになっちゃうじゃん」


そんな私の言葉に、白石は顔を赤くした。


「て、照れるなよ。

 私まで照れちゃうじゃんか」


まあ、言葉通り照れてしまったのだが。


「…涼ちゃんがいきなりな事言うから」


恥ずかしそうに、少し俯く。


「こ、高校生だし、こんくらい当たり前なんじゃないのか?」


「当たり前の定義が解らないよ」


信号待ち。

暫しの沈黙。

アメリカンドッグは、差し出されたままだ。


白石の手首を軽く掴み、アメリカンドッグを軽くかじってみた。

久々に食ったなあ。


「ごっそさん」


信号が変わる。

素早く手を離し、ハンドルを握り直す。

車を走らせながら、ちらりと白石を見ると、相変わらず恥ずかしそうにしている。


「ちょ、白石さんや。

 いつまでそうしてんのさ」


我に返った白石は、まじまじとアメリカンドッグを見つめると、小さくかじった。


「涼ちゃん、やっぱりチャラ男」


「えっ、何でだよ!?」


何でチャラ男なのか。

アメリカンドッグを食う奴はチャラ男なのか?


白石はそのまま黙々と食べていた。

車内はラジオの音だけになる。


私も腹減ったな。

おにぎり食いたい…。


「し、白石、私のおにぎり取ってくれるか?

 出来れば封を切ってほしいんだけど」


頷いた白石は袋からおにぎりを取り出し、ちゃんと封を切って渡してくれた。

一口食べると。


「一口ちょうだい?」


運転しながら、白石におにぎりを渡す。

少し躊躇いながらも、おにぎりを頬張る。


「また間接ちっす~」


白石がゲホゲホとむせる。

それを見て、笑ってしまった。


「白石、可愛いな」


「か、可愛くないしっ!

 もう、変な事言わないでよっ!」


顔を真っ赤にしながら怒る。

そんな姿が、余計に可愛く思えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る