第34話

白石の口唇が近い。

当の本人は、また眠ってしまっている。

とにかく、体を離さなくては。


が、バランスがよろしくなく、上手く腕に力が入らない。

もとより、白石が腕をほどいてくれない。


片手で腕をほどこうとするも、結局出来なかった。

体を横にずらし、白石の横に体を落ち着かせる事に成功する。


また白石が目を覚ます。

先程と同じく、寝惚けたままだ。


私を見つけると、私の背中に腕を回し抱き付いてきた。

なおかつ、私の腕に頭を乗せている。

これ、腕枕じゃん。


「ちょ、おい、白石っ」


私の言葉は虚しく響くだけだった。

また動けなくなってしまった。

これは諦めた方が良さそうだ。


白石の体、あったかいな。

てか、こうやって誰かと一緒に寝るの、かなり久し振りだ。


白石の頬に触れてみる。

やわらかいな。

あんまり触ると起こしちゃうか。


駄目だ、眠くなってきた。

白石があったかいせいか?

それとも、傍に人がいる安心感からだろうか。


目蓋を閉じる。

少しだけ白石を抱き寄せる。

白石が起きたら、怒られるだろうか。

…さっきから白石に怒られないか、心配してばかりだな。


欠伸を1つすると、そっと眠りの世界への扉を開いた。

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