第33話

目が覚める。

雨は相変わらずしとしとと降り続いている。



何で布団で寝てるんだっけ。



体を起こし、ベッドを見てみる。

あどけない寝顔の白石が、寝息を立てながら眠っている。

そうだった、白石をうちで預かったんだっけ。


両腕を上に持ち上げ、そのまま伸びをする。

休みの日は気が抜けまくるな。


眼鏡をかけて、もう1度白石の顔を覗き込んでみる。

白くて綺麗な肌。

長い睫毛。

口元には小さなほくろ。

さらさらの髪の毛。

やわらかそうな口唇。

小さな顔。

可愛いし、綺麗だと思う。


おでこにそっと触れてみる。

昨日程熱くはない。

微熱くらいだろうか。

いくらかでも、熱が下がって良かった。


布団をかけ直してあげると、煙草を持ってキッチンへと向かい、換気扇を回しながら煙草を吸う。

朝の日課みたいなもんだ。


昨日は白石の家の話を聞いて、驚きを隠しきれなかった。

思わず抱き締めてしまったけど、後々になって「セクハラ!」と怒られなくて良かった。


甘え方を知らない、か。

きっと今まで誰にも甘えずに、1人で踏ん張って生きてきたんだろうな。

また胸が締め付けられる。


煙草を吸い終わり、リビングに戻る。

もう少し寝ようか、どうしようか。

悩んでいると、白石が目を覚ました。


「…おはよ、先生」


眠そうな声だ。

まだ寝惚けているようにも見える。


「ん、おはよ」


ベッドの端に腰掛ける。


「まだ体は怠い?」


「…眠い」


駄目だ、会話になりそうにない。


「もう少し寝てな」


「うん…」


と、白石が両腕をこちらに伸ばしてきた。


「どうした?」


顔を覗こうとすると、首に腕を回され、そのまま引き寄せられた。

いきなりの事に体勢を取る事が出来ず、バランスを崩す。

すんでのところでベッドに手を着き、白石を潰す事は免れた。


お互いの顔が近い。

ゼロ距離と言っても過言ではない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る