第24話

何かの音がする。

何の音だろう。


ゆっくりと目蓋を開ける。

ここ、何処だっけ。


体をゆっくりと起こしてみる。


「お、やっと起きたか」


そうだ、あたしは先生の家にいるんだった。

先生はベッドの端を背もたれにして、もたれながらゲームをしていた。


「先生、眼鏡してる」


「うん、学校じゃコンタクトだけど、それ以外は眼鏡なんだ。

 裸眼でも大丈夫なんだけど、夜はちょっと見えづらいから眼鏡してるんよ」


先生は四角い黒縁眼鏡をかけている。

眼鏡が似合うなと思った。


「今何時?」


「もう20時過ぎだよ。

 よく寝てたなあ」


3時間近く寝ていたようだ。

夢を見ずに寝るなんて、いつぶりだろう。

熟睡なんて、ここ何年もしていなかったのに。


「腹減った?

 お粥作っといた。

 食べるなら仕度するよ」


「…食べる」


「解った」と答えた先生は立ち上がる。

先生もあたしと同じく、Tシャツにジャージ生地のズボンを着ていた。


暫くすると、お盆にお椀とお茶が入ったコップを乗せて戻ってきた。


「口に合うかは解らんが」


お盆をテーブルに置く。

まだ少し怠い体を動かし、床に座った。

すると、先生は座布団をくれた。

改めて座布団に座る。


先生は冷蔵庫から缶ビールを持ってきて、あたしの隣に座るとプルトップを開け、勢いよく飲み始めた。


「先生はご飯食べたの?」


「さっきカップラーメン食ったよ。

 ほら、冷めちゃう前に食べちゃいな」


れんげを持ち、お粥をすくって食べてみる。

玉子が入っていて、ふわふわしていて美味しい。


「先生、美味しい」


「そっか、それなら良かった。

 食べられるだけ食べな」


先生は嬉しそうな顔をしながら言った。

眼鏡をしている先生は、裸眼の時よりも男の人に見える。

普通にイケメンだ。


お粥を食べ終わると、処方された薬を飲んだ。

先程ぐっすり寝たせいもあり、まだ暫くは寝れそうにない。


「病人は寝てなきゃ駄目だぞ~」


「食べてすぐに横になったら太るよ」


「白石は痩せすぎだから、もうちょい太ってもいいんじゃないか?」


先生は笑いながら、お盆をキッチンに持っていき、洗い物を済ませた。

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