第22話

「まだ学校にいるでしょ?

 ちょっと待ってて。

 一旦学校に戻るわ。

 そのまま車で運びたいんだけど、片付けなきゃいけない仕事があるのよ。

 だから、涼ちゃんがあたしの車に乗って、白石ちゃんを連れて涼ちゃん家に行って。

 ごめんね、ちょっと手間になっちゃうけど。

 ん、じゃあよろしくね」


電話をきると、鞄に携帯を戻す。

それより、涼ちゃんとは。

はて、どっかで聞いた事があるような。


「じゃあ、病院に行こうか」


山口先生に連れられ、病院へと向かった。

案の定風邪だったが、2、3日大人しくしていれば治るとの事。

幸い、明日は土曜日で学校も休みだ。

布団の中で過ごせばいい。


病院を後にすると、再び学校へと戻ってきた。

正門の近くに車を停めると、人影が見えた。


先生だ。

車に近付いてくると、山口先生は車から降りた。


「じゃあ、白石ちゃんの事よろしくね。

 仕事が終わったら、顔を出すから」


「ん、解った」


入れ替わりで先生が車に乗り込んできた。


「よっ。

 熱出ちゃったんだって?

 大変だったな。

 じゃあ、行くか」


山口先生は手を振っている。

先生が手を振り返すと、車をゆっくり走らせた。


「先生、何処行くの?」


「ん?そうだなあ、私と白石の愛の巣?」


けたけたと楽しそうに、笑いながら答える先生。

愛の巣…久々に聞いたな。


それにしても、体がさっきより怠い。

熱が上がってきたのかな。


と、おでこに何かが触れた。


「ちょっと熱上がってきたかな?

 もう少しの辛抱だから、我慢してな」


先生の手が、あたしのおでこに触れたのだった。

ひんやりしていて気持ちがいい。


暫く車を走らせていたが、ゆっくりと車が停まる。


「ちょっと待ってて。

 鍵開けてくる」


そう言い残すと、先生は車から出た。

助手席に座っていたあたしは、目で外を見てみる。

ここは何処だろう。


先生は戻ってくると、助手席のドアを開けた。


「白石、立てるか?」


あたしにそっと手を差し出す。

シートベルトを外し、鞄を持つと、先生の手を取った。

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