6月/距離

第21話

しとしとと雨が降り注ぐ。

もう何日も雨が続いている。

まあ、梅雨だから仕方がないのだけれど。


雨は嫌いじゃない。

雨の音も嫌いじゃない。


6月も中程。

相変わらずな日々を過ごしている。

変わったと言えば、相談室に通うようになった事だろうか。

居心地の良さに甘えて、割りとお邪魔させてもらっている。


「雪ちゃん、帰ろ~」


「希美、今日は部活ないの?」


「うん、今日は休み~。

 てか、雪ちゃん顔赤くない?」


「そう?」


言われて顔を触ってみると、少し熱いような気がする。

そして、少し体が怠い。


「雪ちゃん、熱あるんじゃないの?

 保健室行った方がいいんじゃない?」


「うん、そうしてみる」


「あ、うちに来ても平気だからね?」


一瞬希美の家に行こうかと思ったが、迷惑にはなりたくない。


「ん、気持ちだけ貰っとく。

 じゃあ、ちょっと保健室行ってから帰るね」


希美に別れを告げると、鞄を持って保健室へと向かった。

今日は相談室には行けそうにないな。

少し残念に思いながら、相談室を素通りする。


「失礼します」


「あら、白石ちゃん、いらっしゃい。

 どうしたの?」


「ちょっと熱っぽくて」


「じゃあ、熱計ろうか」


長椅子に座ると、山口先生は立ち上がり、棚に向かうと体温計を取り出し、あたしに差し出す。


「あ~、ちょっと熱あるねえ。

 季節の変わり目のせいもあるかな」


計り終わった体温計を山口先生に渡した。

やはり熱はあったらしい。


「お家の人はいらっしゃる?」


「いえ、いません…」


「あらら、困ったわね」


風邪を引いたり、体調を崩した時は、希美が面倒を看てくれる。

希美のお母さんも一緒にきて、世話をやいてくれるが。


「あ、そうだ」


山口先生はデスクに戻り、鞄を取り出した。

そして、携帯を取り出すと、誰かに電話をかけ始めた。


「もしもし~?

 あのね、白石ちゃんがちょっと熱っぽいから、病院に連れてってくるね。

 でね、お家の人がいらっしゃらないみたいだから、白石ちゃんの面倒を看てあげてほしいんだけど」


誰に電話をかけているのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る