第15話

最近は相談室に行く機会が増えた。

軽い気持ちで足を運んでいる感じ。

1人でいるくらいなら、誰かと一緒にいた方がいい。

家に帰っても、どうせ1人だし。


さっき先生に頭を撫でられたせいで、髪がぐしゃぐしゃになっちゃった。

…誰かに頭を撫でられたのは、いつぶりだろう。


さて、これからどうしようか。

行く宛はない。

希美は部活だろうし、これといった友達もいないし。

仕方がない、家に帰るか。


靴を履き替え、校門を抜け、家に向かって歩いていく。

学校から家までは歩いて30分弱。

チャリを使って行ってもいいんだけど、ダイエットがてら歩くようにしている。

流石に真夏は暑すぎるから、チャリで学校に行ってるけど。


コンビニを通り過ぎ、角を曲がろうとした時。


「よお、雪乃ちゃん」


先日別れた元カレが声を掛けてきた。

無視して通り過ぎようとすると、手首を掴まれた。


「無視すんなよ、雪乃」


「馴れ馴れしく呼ばないでよ」


手を振り払おうとしたものの、相手の力が強すぎて振りほどけなかった。


「何か用?」


あからさまに嫌な態度を取ってみるも、相手は顔色1つ変えない。


「いやあ、こんなに可愛い子と1発も出来ないで別れるのも嫌だったからさ。

 ちゃんと別れてほしけりゃ、1発やらせてよ」


「はあ?

 そんなん嫌に決まってるじゃん」


「聞いたぞ、お前誰にでも脚開くって。

 俺にも脚開けよ」


上から下へと、舐め回すようにあたしを見る。


「バカな事言わないでよ」


「どうでもいいよ。

 ほら、さっさとホテル行こうぜ?」


先程よりも強い力で掴まれる。

力では到底勝てる筈もない。


「やめて、離してってば!」


道行く人々はあたし達を一瞬見るも、すぐに視線を元に戻す。

勇敢に声を掛けてくれる人なんていない。


「暴れるんじゃねえよっ!」


手を振り上げられ、咄嗟に目を瞑った。

片方の手で顔を覆う。


待てど暮らせど、痛みが訪れる事はなかった。

手を退けて、そっと目蓋を開いて見る。

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