第14話

次の日。

放課後に白石が相談室にやってきた。


「いらっさい」


「いらっしゃいました」


すたすたと椅子の方へ歩き、腰を掛ける。

鞄からゲーム機、お茶のペットボトルを机に出す。


「本当に持ってきたんだな」


「昨日持ってくるって言ったでしょ?」


さも当たり前のように答える白石は、ゲーム機の電源を入れた。


「ほら、先生も準備して?」


「お、おう」


促され、私も鞄からゲーム機を取り出し、白石の向かいの席に座った。


「山口先生、忙しいかな」


「メッセしてみるよ」


早速メッセを送ってみると、すぐに「今準備する」と返信が。


「山口先生、準備するって」


「良かった。

 先生の武器とか弱いから、素材取りに行かなきゃ」


結局、白石のリクエスト通りに3人で狩りに行った。

白石は本当に上手くて、私も感動したくらいだ。


「まじで上手いね」


「学校から家に帰っても、暇だからずっとやってるの。

 PS4の方でもやってる」


「ゲーム好きなの?」


少しの間。


「別に好きじゃないかな。

 暇潰しにやってるだけ」


「ふうん?」


それ以上は聞かなかった。

何となく、聞いてはいけない雰囲気だった。


「そろそろ帰ろうぜ~」


夕陽が室内に射し込んでいる。


「もうこんな時間かあ。

 狩りに行ってると、時間が経つの早いよなあ」


ゲーム機を机に置き、腕を上に伸ばす。


「まだまだこれからなのに」


「また違う日にやればいいっしょ?

 ほら、片付けな。

 私は掃除してから帰るからさ」


席を立ち、窓の外を見る。

茜色の空が綺麗だった。


「…また一緒に狩りに行ってくれる?」


ぽつり、白石が呟く。


「いいけど、放課後だけだからな。

 授業はちゃんと受けなきゃ駄目だぞ」


「…解った」


「よし、いい子いい子」


白石の側に行き、頭をわしわしと撫でてみる。


「ちょっと!

 髪の毛ぐしゃぐしゃになっちゃったじゃない!」


「はははっ、怒るなよ~」


私の顔を見ると、白石は溜息を1つ溢した。

怒らせちゃったのだろうか。


「今日は…ありがと。

 楽しかった」


素直なところ、あるんだな。

悪い子じゃなさそうだ。


「ん、私も楽しかったよ。

 気を付けて帰るんだよ?」


白石はそっと笑った。

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