第3話

4月の半ば。

週に1度の見回り当番の日がやってきた。

校内や学校裏等を見回り、サボっている生徒がいないかを偵察するのだ。


ポケットに電子タバコを忍ばせ、校内を徘徊する。

教室を通り過ぎようとすると、私に気付いた生徒がこちらに手を振る。

手を振り返すものの、毎回こんなんでいいのかと自問自答したりする。


校内を回り終えると、靴を履き替えて外へ出た。

生徒が隠れてそうなところを見て回る。

今のところ、サボっている生徒に遭遇していない。


休憩がてら、人目のつかない学校の裏に行き、ポケットから電子タバコを取り出して吸う。

紙煙草を吸いたいのだが、匂いが付いてしまうから学校では電子タバコを吸うようにしている。

最近の喫煙者は肩身が狭い。


壁に寄りかかりながら煙草を吸っていると、人の気配を感じた。

誰かいるのか?

口に煙草をくわえたまま、そちらに行ってみる事にした。


するとそこには、眠っている生徒がいた。

無論、うちの学校の生徒だ。

リボンの色から、3年生だと判断する。


いやいや、待て待て。

何でこんなところで、壁にもたれながら座って寝てるんだ?

そもそも、今は授業中じゃないか。


面倒くさいが、とりあえず起こしてみる事にする。

屈んで、生徒の肩を揺すってみた。

…起きない。


長い髪はほんのり茶色かかっている。

白く綺麗な肌。

長い睫毛。

まるで、人形のようだ。


「もしもしお嬢さん、起きて下さいな」


名前が解らないから呼びようがない。


「お~い、こんなところで寝るなって。

 てか、無防備過ぎだろ~。

 起きろよ~」


ゆさゆさと揺すり続けると、漸く起きてくれた。

まだ完全に覚醒していないようで、眠気眼のまま私を見る。


「…だあれ?」


目を擦りながら呟く。


「佐藤涼。

 相談員だよ」


「知らないなあ」


「うん、知らなくていいんだけどさ、君は何でこんなところで寝てるんさ。

 てか、今授業中だろ?」


「あ~…忘れてた」


「覚えとけよ、忘れんなよ。

 ほら、とりあえず立ちなさい」


煙草を片手に持ち、もう片方の手を彼女に差し出した。

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