第24話

1週間後、蘭丸が土屋君の家で勉強するから遅くなる、と出かけて行った。


二人はどんどん親密になり、土屋君も何度か家に遊びに来た。

最近急激にレパートリーが増えつつある、父の手料理も一緒に食べた。


そう、蘭丸はお料理をほとんどしなかった。

たまに電子レンジであたためのボタンを押すくらい。

ママは結構お料理が好きだったし、上手だったのに。


ママの手料理の味が懐かしかったけど、

父が一生懸命作ってくれているので、口には出さなかった。

ま、私も手伝えばいい話だし。


その代わり、蘭丸は掃除と整理整頓を神経質なほどきっちりしていた。

父も私も掃除が苦手なので、蘭丸によく怒られた。


怒られたその時はするけど、何も言われなければ、元の混乱状態だ。

蘭丸は怒りながらも、きちっと掃除してくれ、後片付けもしてくれた。

蘭丸がいなければ、我が家は汚いままだろう。


土屋君は、初めて来たとき、家が綺麗に片付いてるのに少し驚いてたけど、

全部、蘭丸のおかげなのだ。


それにしても、母親がいないことを何も尋ねず、

父の料理を美味しいと残さず食べてくれる礼儀正しい土屋君に、

父もすっかり感心していた。



蘭丸が土屋君の家に行くのは今日が初めてだ。


土屋君は、小学校高学年の時にお母さんが亡くなったが、

歳の離れた年子のお姉さんが二人いて、彼の面倒を見てくれたらしい。


土屋君のお父さんは、ごく普通のサラリーマンだが、仕事人間というのではなく、

もともと病弱なお母さんの代わりに、家事もこなしていたそうだ。


お姉さんたちは二人とも優秀で、うちの高校を出て、家から通える国立大学に入った。

土屋君と同じく美形で、二人ともミス学年だった。


最初は、外見に優劣をつけるなんて、とミス・ミスターの慣習に反対していたが、

ミス学年になるには、美貌だけでなく、権謀術数が必要だと聞き、

いずれも負けず嫌いだったので、作戦を練って見事ミス学年となった。


年子だったから、ミス1年2年、ミス2年3年と2年続けて姉妹でミスとなり、

学校の伝説になっている。


そんなお姉さんたちに結構厳しく育てられたので、

土屋君は立派なフェミニストであり、偉そうなところが全くない。


また、お姉さんたちに仕込まれて、家事もきちんと出来て、面倒見もいい。


だから土屋君に色々面倒を見てもらってる蘭丸は、

土屋君のお姉さんたちにも感謝しなくてはならないのだ。

(もちろん、父は蘭丸に手土産を持たせた)

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