第12話

1時間目数学の先生(女性)は、美少年二人の並んでいる姿を見て、

しばらく感動した様子だった。

さすがに何も言わなかったけど。


クールな先生だったので、サクサクと授業は進んだが、

ときおり、先生は並んでいる二人にちらちら視線を走らせていた。

それに気づいたのは私だけだ。


いや蘭丸も絶対気づいていたが、すましたものだった。


他のクラスメートは、みな二人、特に蘭丸ばかり見ていた。



2時間目は古文で、

この先生(男性)は普段からくだけているところがあり、

今日も教室に入るなり、蘭丸を見て、


「おお、君が転校生か。確かに、確かに美青年だ。」と言い、

くるっと黒板に向かって


『日本の美少年と男色』と黄色いチョークで書いた。


教室がざわめく。先生は構わず、

「今日は、授業の前に、雑談だ。

このテーマを不愉快だと思うものは、その時点で出て行ってもらって構わない。

出て行っても点数に差し支えないからね。」と言った。


ざわめきは少しずつ静まった。


「その前に。最近、私はあるミステリを読んだのだが、

その中に、ギリシャの戦士は戦場に気に入った若者を連れて行く、

という逸話があった。


彼らは戦場で、ともに戦い、ともに眠り、ともに死んでいく、とね。

ともに眠り、というところは、ただ一緒にぐっすり寝る、

という意味じゃないのは、君たちにもわかるだろう。

わからない人には、説明しても無駄であるし。」


くすくす笑いが起きる。

先生は続けた。


誰も席を立つ者はいない。

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