第8話
ニコニコと私たちを見ていた父が、
母(と自称している美少年)に尋ねた。
「蘭丸ってのは、あれかな。信長の小姓の?」
「森蘭丸?うーん、彼も美少年で気が利いて、
信長と衆動の仲だけど、」
とその美少年が、ちらと父を横目で見た。
その横目というか、目の動きが、とても色っぽい。
これか。これが噂の流し目ってやつか。
初めて見たけど、全くすごい威力だ。
私もちらっと父を見る。
(残念ながら、流し目にはなってなかった)
父は真っ赤になっていた。
あああ情けないかも。
美少年はその流し目を私に戻すと、つんとすまして、
「F式蘭丸よ」と言った。
うわあ。大島弓子様のあの名作の名前を使っちゃうの。
母は、読書家ではあるが、少女漫画も大好きで、
母の部屋には、少女漫画だけの本棚もあった。
私もよく読ませてもらっていた。
F式蘭丸の蘭丸はすごい美少年で、勉強も運動も何もかもできる。
(それに、なによりも、物語自体が深く美しいのだ)
目の前に座ってる美少年も、
確かに美少年と呼ぶにふさわしい外見だが、
その蘭丸を名乗るなんて、厚かましいんじゃない。
そんなことを思ってる私の顔をじっと見て、
美少年が、
「ま、色々あるのよ。」と言う。
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