第5話

リビングに行くと、父がテーブルにいそいそと朝食を並べていた。


最近、朝食はずっと父が用意してくれている。

お味噌汁とご飯系ではなく、

トーストとミルクティーとトマト、というシンプルな構成だ。


トーストにオリーブオイルをたっぷりかけて、

クレイジーソルトをふり、

その上にトマトをぶ厚くスライスしたものを乗せて食べる。


これは、母が発見した食べ方で、家族中がハマっていた。


今日は、モッツァレラチーズもスライスされていて、

レタスの添えられた、いびつなオムレツまである。


不器用な父の涙ぐましい努力の結晶か。

オレンジジュースなんてのもある。


いつもよりあきらかに豪華だった。


「お、美々子、今日は早いなあ。ほら、座って座って。」

父自身も、いつもより、いそいそしていて、非常に嬉しそうだった。



美少年とはいわゆる真逆の父である。


母は、女性の平均身長より少し高いだけが、

華奢なバレリーナ体型なので背が高く見えた。


父の背は母と変わらず、でも横幅は倍以上あった。

最近は髪も薄くなり始めている。


(誰がどう見ても)決してハンサムガイではないけれど、

優しくて愛すべき男性だ。

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