第20話
崑爺は、くっくと楽しそうに笑った。
「いや、手練れの連中に、兄弟がいるのだが、これが兄弟そろって、結構な男前だそうだ。」
そう言って、蘭蘭をチラッと見た。蘭蘭は、飲み込めた、という顔をする。珉珉と土竜は、何の話だろう、という顔をしている。
「好き合ったのですか?」と蘭蘭が、笑いを含んだ声で聞く。
「へ?誰と誰が好き合うわけ?教主?」と珉珉が聞くと、土竜はさすがに気付いた。
「まさか、姉たちが!?」と、びっくりしている。
崑爺は、嬉しそうだ。
「お前の姉たちは、非常に綺麗ということだから、わしは、その色香で誰か男をたぶらかすか、と踏んでたのだがな。」
土竜が、ちょっと赤くなって下を向いた。
「姉たちは、おとなしいので、そんなことはできないと思いますよ。」
「ああ、お前を見ればわかるよ。」と崑爺が優しく言う。
「じゃあ、なんでまた?」と蘭蘭が聞くと、崑爺が嬉しそうな声のまま言う。
「手練れの者たちも、最初のうちは、ただの人質だと扱ってたのだが、あの美貌だ。懸想するやつも現れる。」
珉珉が、うげーという顔をしたので、蘭蘭が吹き出す。
「それに、」と崑爺が急に真面目な顔になった。
「わしの元弟子が、姉たちに、危害を加えそうになっていた。」
「え!?」と土竜と珉珉が驚く。
「いけにえにする前に、試し切りさせろ、みたいなことを言ってな。」
崑爺の言葉に、蘭蘭が震えながらも、
「しかし?」と促す。崑爺はうなずく。
「そう、その頃、男前の兄弟は、姉たちのたおやかな優しさを知って、色欲ではなく、本当に好いてきてた。」
蘭蘭はうっとりとした顔になった。
「叔父上、それで?」と、お話をせがむ子供のような声を出す。
「うむ。姉たちもな、その兄弟に好意を抱くようになっていた。」
「うわあ。」と、珉珉と蘭蘭が同時に声を上げた。
「それで?それで?」とふたりは、崑爺に続きをせがむ。
崑爺もなんだか嬉しそうである。
「それでな、その兄弟は、いけにえにされる前に、姉たちを連れて逃げるつもりになっておる。」
「ちょっと待ってください!」と土竜がさえぎった。皆が土竜を見る。
「どうして、そのような細かいところまで、叔父上はご存じなの?」
問うた内容より、土竜は女言葉が板についてきたな、と珉珉は面白く思った。
しかし、確かに不思議だった。崑爺は、見てきたかのように話す。
崑爺は、ほんの少しだけ口元を緩めた。
「わしには、味方してくれる者が多いのでな。」
「でも、あの連中には、」と蘭蘭が言いかけると、珉珉が、
「まさか、あの手練れの中に、」と驚きかけたが、崑爺は、笑って手で制した。
「あの連中にまでは、手が出ないが、あの連中と連絡を取り合う者がおってな。」
蘭蘭は、草の上に手をついた。
「叔父上、恐れ入ります。さすが、としか。」
土竜も、崑爺にひれ伏した。
「叔父上がおられなかったら、私達は、私はどうすることもできなかったわ。叔父上も、そして、天兄さんも、本当にありがとうございます。」と地に頭をこすりつける。
珉珉が、
「私は?私には感謝してくれないのか?」と言ったので、皆が笑った。
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