第15話

崑爺が、三人を見ると、皆食べ終えて、木の下で黙想している。昆爺はそっと口を動かした。

「集まれ。」わずか小さな声であったが、三人の耳にちょうど届いた。少し離れていれば、聞こえないだろう。三人は目を開け、音をたてずに崑爺のもとに集まる。


崑爺は、蘭蘭と珉珉を並んで立たせた。

「お前たちは、二卵であるが、これだけの技が使えるようになった今、一卵のように、頭言葉が使えるはずだ。」

「頭言葉?」と珉珉が聞くと、崑爺はうなずく。

「頭の中で思うだけで、離れていても言葉を伝え合うことが出来るのだ。」

蘭蘭と珉珉は、横を向いて、お互いを見た。


崑爺は、3本の木の下に、先ほどと同じように、3人別々に立たせた。真ん中の木に土竜が立つ。

蘭蘭と珉珉は、両端の木の下に、幹でそれぞれが見えないよう、外側に立たされた。

崑爺が、蘭蘭に、

「何か強く思いなさい。」と言った。蘭蘭はうなずき、目をつぶった。


「聞こえる!」と、珉珉の驚いた声が、離れた木の向こうでする。

3人は、土竜の立つ木のもとに集まった。

「なんて聞こえたの?」と土竜が聞くと、珉珉は赤くなった。

「言えないよ。」と珉珉は言って、蘭蘭の耳元に何か伝えた。蘭蘭は、

「その通りだ。」と笑った。


崑爺は面白そうに、ふたりを見ていたが、

「では今度は、龍、お前がやってみなさい。」と珉珉に言った。

蘭蘭は珉珉に、ペロッと舌を出して、ふたりは、互いに離れた。

しばらくして、

「すごい。はっきり聞こえた。」と蘭蘭が言って、崑爺と土竜のところに来た。

土竜は、

「私は何も聞こえなかった。」と言って珉珉を見ると、珉珉はニヤニヤ笑っている。


珉珉は、なんだか大きな力を得たような気分になった。蘭蘭を見ると、蘭蘭も嬉しそうだ。土竜が、珍しく悔しそうな顔を隠してないのも、なんだか嬉しい。

(珉珉、聞こえる?)と蘭蘭の声が頭の中でした。

(聞こえるわ。)

(うふふ。楽しいわね。)

(うん、)


「お前たち、頭言葉を使い過ぎると、本当の声が出なくなってしまうぞ。」と崑爺がぼそっと言った。

「そういえば、ちょっと頭痛がしてきた。」と珉珉が言うと、蘭蘭もうなずく。

「ああ、その通りだ。頭も痛くなる。なので、面白半分に使うのはよくない。」

「はい。」と、蘭蘭と珉珉は同時に言った。

「今夜、屋敷に忍び込むときに必要になるかもしれぬ。そのときまで使わぬように。」

「はい。」と二人は神妙にうなずいた。

「では、今夜の手はずだ。」と、崑爺が皆を集めた。

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