第8話
そうこうしているうちに、師父が帰って来た。
師母から、土竜のかたき討ちの話を聞くと、師父は重々しくうなずいた。
「土竜、まだ修行中のお前を旅に出すのは、胸が痛いが、一日でも早く、仇を見つけるのだ。そうすれば、お前の姉たちを無事取り戻せるだろう。
次の満月まで、一卵に手を出さない、という可能性があるそうだ。ならばまだ希望はある。
私から、ひとつ技を授けよう。」
それを聞いて、双子姉妹は喜んだが、師父が、
「土竜にだけだ。」と言ったので、ふたりは口を尖らせた。
「あなたたちは、さっきのでも十分なほどよ。」と師母が言い、蘭蘭が、
「お母様、じゃ、もうひとつ、技を授けてよ。」と、母に甘えた。
「いいわ。では、私といらっしゃい。」と師母は、双子姉妹を部屋の外に出した。
師母には、わかっていた。先ほど教えた風の技を、蘭蘭は、もうすでに会得していると。
蘭蘭には、天賦の才があり、どんな技を教えても、易々と身につける。型によっては、覚えるだけで、会得できないのも多いが、風の技は、師母と同じ、軽やかな体つきの蘭蘭には、会得はたやすい。
それに反して珉珉には会得は難しい、ということも師母にはわかる。懸命に修行すればどんな技も身につく、と珉珉は思っているが、得意不得意があるのだ。
がっしりした珉珉には、土の技がいいだろう。きっと師父は、土竜に土の技を教えているだろうから、あとでこっそり教えてあげよ、と土竜に頼まねばなるまい。
にしても時間がない。土竜は今夜には立つだろう。師父が珉珉に教えてくれればいいのだが、たぶん無理だろう。
「お母様、何を教えてくれるの?」と言う蘭蘭の声で、はっと思いから覚める。
「そうね、ふたりには、」と、師母は、期待と自信に満ちた蘭蘭の顔と、生真面目な珉珉の顔を見ながら、
「水の技を教えましょう。」と、にっこり笑った。
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