第63話

案内された部屋には、大きな鏡と椅子大きくて長いテーブル、フィッテイングルームがあった。


「それでは美鈴さん、こちらへ」


菊池にフィッテイングルームへ通された。


「美鈴さんにお似合いになるものを選んできました。

 気に入っていただけると嬉しいのですが…」


「あたし、服のサイズも何もお教えしてないですよね!?」


「さっきエステを受ける前に、全身のサイズを測りましたよね?

 それを携帯に送ってもらったです。

 ですので、サイズの方は問題はないと思います。

 何着か持ってきたので、お好きなものをお選び下さい」


待て待て待て。

何だこりゃ、何が起こっているというのだ。


菊池は両手に持っていた紙袋を開けると、ワンピース…ドレスを3着並べた。

後から来たスタッフは、やはり大きな紙袋を持っていて、箱を取り出すと可愛いヒールが3足。

もう1人のスタッフの紙袋には、箱に入ったバッグが3つ。


「どうぞお好きなものをお選び下さい」


名画「プリティ・ウ〇マン」の、ワンシーンが頭に浮かぶ。

それに近いものが、今自分に起こっているのだ。

美鈴は目を見開いて驚いたまま、固まってしまった。


「美鈴さん、お気に召しませんでしたか?」


菊池の心配そうな声で、やっと我に返る。


「ちょ、あの、こ、これは一体!?」


「今夜美鈴さんがお召しになる洋服です。

 無論、ご指示は薫さんからです」


「こ、こんなお高いもの、あたし着れませんって!

 そ、それにお金だってないです!」


「これらは全て薫さんからのプレゼントですので、美鈴さんはお金を払う事はございませんよ」


「そ、そんな上手い話が何処にあると言うのですきゃ!?」


「ここです」


菊池は先程と同じように微笑む。


「か、薫さんって何者なんですか!?」


「それはわたくしの口からはお伝え出来ません。

 直接薫さんからお聞きするしかありませんが…美鈴さんにでしたら、話してくれるかもしれませんね。

 さあさあ、待ち合わせの時間も迫っていますので、とりあえず一通りご試着して下さい。

 服が決まって着替えたら、最後にメイクをして完了です。

 少々慌ただしくなりますが、どうぞお付き合い下さいね」

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