第48話

懇親会から2週間が経った金曜日。


昼食を済ませ、お茶を飲みながら一息入れていると携帯が震えた。

誰だろうとディスプレイを覗くと、薫からのメッセージが表示された。



『今日仕事終わってから逢える?』



今日は仕事が終わったら、しのぶの店に行こうと思っていた。



『お疲れ様です。

 はい、大丈夫です』



すぐに返信をすると、間を置かずに既読が付く。



『良かった。

 何処で逢おうか。

 いい店知らない?

 出来れば、双方の会社の人が来ない店がいいんだけどな』



それなら話が早い。



『あたしの行きつけの店なら、知ってる人が来ないから大丈夫だと思います。

 今、店の地図を送りますね』



程なくして薫に地図が載っているURLを送る。



『うん、じゃあここにしよう。

 現地待ち合わせで。

 時間は19時で大丈夫?

 汗かいたから、シャワー浴びたり着替えたりしたい』



『解りました、大丈夫です。

 では、後程』



送ると、OKと書かれた看板を持ったキャラクターのスタンプが送られてきた。

やり取りは終了し、持っていた携帯を鞄に戻す。


ゆい以外の人と飲みに行くのは、かなり久し振りだ。

今日は忙しくないし、定時で上がれそうだし、時間も余裕があるから一旦帰宅しよう。


自分も着替えてから、家を出るかな。

買ったまま着てないままのワンピース、着て行こうか。

あれやこれや、一気に考え始める。


まるで、デートに行く時のようだと思った瞬間、我に返った。

別に意中の人と出掛けるのではないのだから、そこまで張り切る必要は…。


いや、手抜きな服装で行くのは何だか気が引ける。

手抜きな格好で行き、嫌味ではないにしろ、薫にあれこれ言われるのは何となく悔しい。

ちゃんとそれなりの格好をしていくとしよう。


そんなあたしを見たら、しのちゃんは何て言うだろう。

ふと、しのぶの事が頭に浮かぶ。


彼女は美鈴に対して、甘いところがちらほら。

ゆいが窘める事でも、しのぶは美鈴を肯定する。


どんな事でも、否定をする訳ではなく肯定してくれる。

が、美鈴が暴走しそうな時は、やんわりと諭してくれる。

そんなしのぶに、居心地の良さを感じている。


言うならば、年上の優しいお姉さん的存在。

自分を理解してくれる、ありがたい存在なのだ。

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