第3章/とりあえず、あの野郎の悔しがる顔を見たいし、ぎゃふんと言わせたい。まじで。
第47話
いつもと変わらない週の始まり。
会社に行って、眠い目をこすりながら朝礼に参加して。
事務所に戻って、いつものように仕事を始めて。
バイクの音が聞こえてくれば、いつものように彼女が顔を見せる。
目と目が合えば、微笑み1つ。
そして、いつものやり取りが始まれば、周りから聞こえてくる笑い声。
薫と連絡先を交換したものの、特に連絡がきた訳ではない。
かと言って、美鈴からも何らかのアクションを起こした訳でもない。
要するに、音沙汰はないままだ。
山田からは毎日欠かさずメッセージが来る。
忙しい人なんだと思っていたが、そうではなかったのではと美鈴は思い始める。
まあそんな感じに、いろんな人に連絡してるんだろうなとも思った。
本当ならすぐにでもブロックをしたかったが、仕事に支障が出そうな気がした為出来なかった。
適当に返事を返し、長くなりそうな気がしたらスルー。
その繰り返しだ。
いつものように、流れていく時間。
仕事が終わり、軽く買い物をして、家に帰り、1日の疲れを風呂で流す。
風呂から上がり、濡れた髪を乾かしたら部屋着に着替える。
冷蔵庫を開け、冷えた缶ビールを取り出してプルトップを開けたら、元気よく喉に、体にビールを流し込んでいく。
本日も頑張った自分にご褒美。
1人の時間は嫌いではない。
のんびり映画を観たり、読みかけの本を読んだり。
好きな音楽を聞きながら、携帯でゲームをやったり。
誰を、何を気にする訳でもない、自分だけの自由な時間。
邪魔される事もない、気ままな一時。
けれど、そんな他愛ない時間を、共有出来る人がいたら…と思う自分もいて。
なんて事のない事で笑える、相手がいたらと思ったりもして。
小さな寂しさに、大きな溜め息。
誰かに傍にいてほしい時もある。
誰かの肩に、自身の頭を持たれ掛けたくなる時もある。
言葉に出来ない気持ちに、包まれるのが切ない。
強がりたい訳じゃない。
かと言って、虚勢を張ってる訳でもない。
言い訳めいた言葉が、頭の中をぐるぐる回る。
結局のところ、自分は寂しいのだ。
それを改めて知れば、虚しさが溢れてくる。
潤む瞳。
涙を堪えながら、残っていたビールを飲み干す。
愛したい。
愛されたい。
ただ、それだけなのに。
自分の『最愛』になる人は何処にいるのだろう。
静かに流れた涙を拭うと、何とか気持ちを落ち着かせながら、美鈴は独りの時間を過ごしていった。
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